東京電力は今月の13日、福島第二原発に納入された神戸製鋼のグループ会社神鋼メタルプロダクツの熱交換器用配管が、必要な計測をされていなかったことを明らかにしました(注3)。規制委は現在までに、神戸製鋼のスキャンダルに関して、日本の原発や燃料サイクル事業者に、調査や対応を求める正式な文書による指示を出していません。更田委員長は、10月18日の原子力規制委員会委員長定例会見で、「それ(福島第二原発)以外の情報をつかんでいるわけではない」「今、つかんでいる情報の限りにおいては、安全上の問題に直ちに結びつくものというのは見つかっていないので、今、注視している」と述べるにとどまっています。
現在来日中のグリーンピース・ドイツ核問題シニアスペシャリストのショーン・バーニーは、「神戸製鋼が検査データを捏造していたという証拠が次々にあがっています。仕様を満たしていなかっただけでなく、報道されているように、日本工業規格(JIS)の法令違反の疑いまであります(注4)。不正は数十年間続けられており、その間、神戸製鋼は国内だけでなく、世界中の原発に部品を供給してきました。日本の原発で使われている数千以上になるであろう部品は、通常運転や緊急停止の際に原子炉を冷やすために欠かせないものもあります。それらの部品の品質、仕様、そして性能は保証されるべきものです。規制委は、ただちに原発産業に対して調査を開始するべきです」と訴えました。
神戸製鋼は、国内外の原子力産業に金属製品とサービスを提供しています。特に憂慮されるのは、原子炉圧力容器(RPV)などの溶接材料、主および補助給水配管、復水器関連製品、加圧水型原子炉(PWR)および沸騰水型原子炉(BWR)双方の冷却系の配管、ジルカロイ核燃料被覆管、およびBWRにおける原子炉燃料チャネルです。さらに、神戸製鋼はフランスのAREVAと提携して、日本でも国際的にも広く使用されている使用済み燃料およびプルトニウム混合酸化物(MOX)輸送キャスクの設計および製造も行っています。同社はまた、六ヶ所村の再処理工場における主要な配管なども供給しています。
2016年、規制委はフランスで日本鋳造鍛造会社(JCFC)と日本製鋼所(JSW)提供の原発部品の強度不足が発覚したことを受けて、電力会社に調査を指示しましたが、現品の検査をすることなく、指示から数週間で問題なしとする結論を出してしまいました。一方フランスでは、2年以上にわたり同問題の調査を続けています(注5)。
バーニーは、「運転中の原子炉で神戸製鋼製品が故障すれば数百万人の健康と環境を脅かすような重大な原発事故を引き起こす可能性があります。規制委は、情報の透明性に責任をもって行動すべきです。広範かつ厳格な調査を実施しなければ、規制委は日本の原子力安全を確保する能力がないことをさらに露呈してしまうでしょう」と語りました。
(画像:福島第二原発)
注1)「原発関連へ納入された神戸製鋼製品の調査・検証を求める要請書」
注2) The Kobe Steel Group Supply Chain to the Nuclear Industry And Safety Implications
参考:神戸製鋼グループの原子力技術と製品
注3) 当社福島第二原子力発電所の配管における寸法成績表の記載内容に関する神鋼メタルプロダクツ株式会社からの報告について (東京電力)
注4)神戸製鋼JIS検査結果で法令違反あれば一段と深刻化も(NHK)
注5) 報告書:日本の原子炉の一次冷却系部材、炭素異常に関するレビュー 最終第二部及び三部 日本の原子力発電所内に存在する欠陥を有する可能性のある部材