関西電力高浜原発4号機用MOX燃料、フランス出港間近ーーグリーンピース「プルトニウム計画の破綻を認め、MOX利用をやめるべき」と警告

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区)は、関西電力高浜原発4号機用のプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を載せた輸送船が、現地時間7月5日、フランスのシェルブール港から日本に向けて出港するという情報を受けて、MOX燃料の使用は、原子炉の安全余裕を下げ、事故時の被害を拡大させる(注1)と警告しました。

(写真:フランスシェルブール港にて)

グリーンピース・ジャパンのエネルギープロジェクトリーダー高田久代は、「日本のプルトニウム計画は、破綻しています。再処理工場の本格稼働は見通しが立っておらず、もんじゅは廃炉が決まりました。プルトニウムは核兵器の材料であり、使い道のないプルトニウムを保有することは、国際ルールに違反しています。日本政府は、プルトニウムを消費していることを示すために、MOX燃料を使う計画を進めようとしているのでしょうが、ウラン燃料用の原子炉にMOX燃料を使用すれば、原子炉の安全余裕は減少し、そのため事故が起こるリスクが高まります。また、事故になれば、その被害はウラン燃料の場合より広範囲に及び、プルトニウムが放出されれば、福井県、関西地域の住民のがんのリスクが高まるでしょう。日本の原子力政策の失敗のために、近隣住民により大きなリスクを押し付けることは許されません。プルトニウム利用計画の破綻を認め、危険なMOX燃料の利用をやめるべきです」と日本政府と関西電力を批判しました。

現地時間7月5日朝、フランスの原子力大手アレバ社によって製造されたMOX燃料16体がフランスのシェルブール港で、輸送船パシフィック・イグレットに積み込まれています。グリーンピースはアレバ社のMOX工場から港への輸送路沿道で抗議活動を行いました。輸送車を数百人もの武装兵士が護衛し、ヘリコプターも出動していました。5日中には、2隻の軽微な武装を施した輸送船のパシフィック・ヘロンとパシフィッグ・イグレットが日本に向けて出港すると見られます。輸送ルートはいくつか想定されますが、パナマ運河を通るルートは安全保障上の不安から選ばれないでしょう。最も可能性の高いルートは、大西洋から南アフリカ南端を通り、南極海へ出て、8月初旬にタスマニア海に入る南ルートもしくは、南太平洋からの北ルートとなるでしょう。高浜への到着は9月の最初の週と予想されます。

現在日本は、国内に10トン、イギリスとフランスにあわせて37トン以上のプルトニウムを保有しています。核兵器製造に必要なプルトニウムは5キログラムほどですが、今回の高浜原発向けMOX燃料には、736キログラムものプルトニウムが含まれます。

高浜3、4号機は、すでにMOX燃料をそれぞれ24体、4体装荷しています。関西電力は今回輸送されるMOX燃料のうち16体を2018年の高浜4号機の定期点検での燃料交換で装荷すると考えられます。

グリーンピースなど市民団体は、1999年から、福島第一原発3号機のMOX燃料の情報も含め、アレバ社に品質管理に関するデータの公開を求めてきました(注2)。しかし、アレバ社はデータを公開していません(注3)。

注1)The Dangers of Using MOX (Pluthermal) Fuel, Edwin S. Lyman, Senior Scientist, Union of Concerned Scientists Washington, DC U.S. July 2015 available at http://greenaction-japan.org/internal/150719-21_mox-safety-talk-en.pdf
日本語資料

注2)Letter to AREVA Japan Calling for Disclosure of MOX Fuel Quality Control Data, 2016-01-28

Letter to AREVA Japan Calling for Disclosure of MOX Fuel Quality Control Data, 2016-01-28


https://www.greenpeace.fr/stop-plutonium/dossiers/MOX_quality_annexe4.pdf

注3)1991年にグリーン・アクション、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会、グリーンピース・ジャパンが高浜原発用MOX燃料を製造したBNFL社に品質管理データを要求し、英国で作られた高浜用MOX燃料のデータねつ造が明らかになりました。これにより、そのMOX燃料は欧州へ返還されました。
参考資料:「BNFL社MOX燃料ねつ造事件の教訓から学ぶ」