2017/03/16 共同声明: 辺野古・高江における米軍基地建設に反対し、 工事中止と計画撤回を求める

沖縄県名護市辺野古・大浦湾では、米軍新基地建設工事が再開され、巨大コンクリートブロックの投下、汚濁防止膜の設置、海底ボーリング調査などが進められています。キャンプ・シュワブのゲート前では連日、市民による座り込みが、海上ではカヌーと支援船による抗議行動が続けられています。

東村高江・国頭村安波では、北部訓練場の部分返還後もオスプレイ用ヘリパッドや歩行訓練ルートは完成できず、未だに自然破壊の工事が続行されています。住民たちは毎日、工事用ゲート前で抗議行動、監視活動を続けています。

私たちは、世界的にみても貴重な生態系と生物多様性の保護という観点から、また、沖縄の人々の人権と民意を無視しているという視点から、日本政府による米軍基地建設工事の強行に強く反対し、工事の中止と米軍基地および訓練施設の建設計画の撤回を求めます。

 

1.辺野古・大浦湾における埋立

辺野古・大浦湾は、マングローブ林、干潟、海草藻場、砂場、泥場、サンゴ礁など多様な環境が連続し、森から流れ込む河川が海底に谷を刻み、長い年月をかけて豊かな海洋生態系がつくりだされた地域です。巨大アオサンゴ群集や日本では絶滅のおそれが最も高い哺乳類のジュゴン(環境省、絶滅危惧IA類)が生息します。沖縄県の自然環境の保全に関する指針では、辺野古・大浦湾海域は、評価ランク Iの「自然環境の厳正な保護を図る区域」とされています。確認されているだけでも、絶滅危惧種262種を含む5,300種以上の海洋生物の生息地です。

環境アセスメントは、海中カメラの設置など事前調査で海域を撹乱してジュゴンを脅かす、方法書意見聴取を終えてから事業内容の詳細を公開するなど、非科学的であり情報公開も不十分なものでした。2011年の県知事意見は、579点もの問題点を指摘し「生活環境及び自然環境の保全を図ることは不可能と考える」としています。しかし、事業者はこれに十分な回答を行っていません。

また、公有水面埋立法は、埋め立てが「国土利用上、適正かつ合理的」であることを要件としています。しかし、埋め立てによる利益(普天間の危険性除去)が、埋め立てによる不利益(生物多様性に富む辺野古・大浦湾の自然環境の価値の喪失、軍事演習の騒音・低周音等による生活環境の悪化、沖縄県・名護市の地域計画等の阻害要因になることによる不利益、沖縄県への過重な基地負担の固定化など)を上回っていることが証明されていません。

今、辺野古の海では工事が再開され、岩礁破砕許可区域外の広大な臨時制限区域にも巨大なコンクリートブロックが投下されています。かつては大浦湾にもみられたジュゴンは、最近では湾内ではみられなくなりました。埋め立てられれば、何万年もかけて形成されたサンゴ礁と貴重な生態系、ここにしか生息しない海洋生物の生息地が永遠に失われてしまいます。

 

2.高江・安波における米軍ヘリパッド建設について

米軍オスプレイ用ヘリパッド建設が行われているやんばるの森は、沖縄島北部の国頭山地に広がる国内最大級の亜熱帯性常緑広葉樹林です。ノグチゲラ、ヤンバルクイナ、オキナワイシカワガエル、ヤンバルテナガコガネなど、地球上でこの森や琉球列島にのみ生息する固有種が多く見られます。このような自然を守り利用してきた人々の暮らしが存在します。高江の人たちはこの地を愛し守りたいと願い、だからこそ、ヘリパッドを造らせないために、もう10年も座り込みを続けてきました。

沖縄防衛局は2007年に「環境アセス図書」を公開しましたが、アセス法や条例にもとづかない自主アセスであり、事業の目的、内容が明記されず、オスプレイの配備が隠されていました。影響予測範囲はヘリパッドの周囲わずか50メートルに過ぎません。その後、防衛局は2016年7月に「検討図書」、9月に「修正版検討図書」を出しています。これらは、今まで野生生物への影響を緩和するために1か所ずつ工事を行うとしていたヘリパッドを4か所同時に着工すること、資材や重機の運搬にヘリコプターを使用すること、工事用モノレールを道路に替えることなど工事手法の変更による環境影響に関する文書です。しかし、結論は自主アセスと同じで「環境影響は小さく実行可能な範囲で影響を回避・低減できる」という「先に結論ありき」のものです。

直径75メートルのヘリパッド6か所とそれらをつなぐ幅5~6メートルの砕石敷道路、歩行訓練ルートの建設とそこで行われる軍事訓練は、森林の破壊と分断、風の吹きこみや太陽光の差し込みによる乾燥化、オスプレイの騒音や高温の排気ガスなど、やんばるの森と野生生物、周辺住民の生活に大きな悪影響を及ぼします。

昨年9月、やんばる国立公園が誕生しましたが、もっとも良好な森林および淡水生態系が残っている北部訓練場は除外されています。このような指定では保護するべき生態系と野生生物を守ることはできず、昼夜を問わずオスプレイが飛び回る軍事基地と隣接していることから、世界自然遺産登録にも無理があります。

 

3.あまりにひどい人権侵害

辺野古には、一昨年、東京警視庁の機動隊が派遣され、座り込み抗議行動の人々を力ずくで排除しました。海上では抗議活動のカヌーや小型船を海上保安官が転覆させるなど、極めて危険な行為が行われました。一方、高江・安波では、昨年、警視庁はじめ県外から500人の機動隊が派遣され、暴力的な排除により多くの負傷者がでました。沖縄県警、海上保安庁による過剰警備、市民排除は今も続いています。

運動のリーダーである沖縄平和運動センター議長はじめ3名の人々は、言いがかりとしか言いようのない容疑で逮捕され、合理的な理由もなく150日近くの長期間にわたって勾留され続けています(うち1名は3月8日に釈放)。これらは、基地を造らせない運動に対する国家的弾圧であり、あまりにひどい人権侵害です。

また、「反対派は日当をもらっている」「反対しているのは県外の活動家」など明らかに事実と異なる報道やデマ、抗議行動に加わっている沖縄県民に対する誹謗中傷も行われています。私たちは、このような人権侵害に対しても強く抗議します。

以上のことから、私たちは、日本政府による辺野古・大浦湾と高江・安波における米軍基地および訓練施設の建設工事強行に強く反対し、工事の中止と建設計画の撤回を求めます。

APLA/沖縄環境ネットワーク/国際環境NGO FoE Japan(エフ・オー・イー・ジャパン)/国際環境NGO グリーンピース・ジャパン/美ら海にもやんばるにも基地はいらない市民の会/ピース・ニュース/ピースボート/辺野古リレー 辺野古のたたかいを全国へ/ラムサール・ネットワーク日本/Okinawa Environmental Justice Project/辺野古への基地建設を許さない実行委員会(11団体)