老朽原発の再稼働に「NO」――住民が高浜原発1、2号機の運転許可禁止を求めて提訴、グリーンピース職員も原告に

国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは、本日14日、関西地域などの住民が名古屋地裁に対して、原子力規制委員会は関西電力高浜原発1、2号機(福井県高浜町)の延長運転を認めないよう求めて提訴したことに関連し、グリーンピース職員2名も76人の原告として提訴に参加したことを発表しました。

運転開始からそれぞれ40年、41年になる高浜原発1、2号機が再稼働するためには、適合審査に合格し、今年7月7日までに詳細設計を定める工事計画と延長運転の許可を原子力規制員会から得る必要があります。しかし、期限までに許可とならなければ廃炉となります。

住民による今回の提訴は、原子力規制委員会に対して、高浜原発1、2号機の延長運転を許可しないよう求めるものです。原告は名古屋、福井など関西地域の住民が中心で、東京と神奈川在住のグリーンピース職員2名も加わっています。弁護団は、地元名古屋の弁護士を中心に、脱原発弁護団全国連絡会の弁護士が名を連ねています。高浜原発の位置する福井県の行政訴訟管轄が名古屋です。また、これまでの原発訴訟で重要な争点であった地震の問題に加え、老朽原発の危険性が議論に加えられます。老朽化した原発では、原子炉圧力容器が劣化し、過酷事故のリスクが高まるからです。

原告として加わったグリーンピース・ジャパンのシニア・グローバル・エネルギー担当のケンドラ・ウルリッチは「関西電力の高浜原発1、2号機は、運転開始から40年を超える老朽原発です。老朽原発では、原子炉容器が中性子を浴びて劣化するなどの問題が生じます。40年を超えた原発は廃炉にするというのが日本の基本ルールであるにもかかわらず、原子力規制委員会は高浜原発1号機の再稼働適合審査書案を了承してしまいました。原子力規制委員会が老朽原発の再稼働を止めないのなら、市民が司法の力で止めるしかありません」と訴えました。

運転開始から40年を超える原発の運転延長は、危険なだけでなく、現実的な選択ではありません。3月に廃炉が決定された四国電力の伊方原発1号機の運転年数は39年でしたが(注1)、再稼働のための追加対策に1700億円かかるとして運転延長が断念されました。関西電力のケースでは、当初美浜原発3号機で1290億円と見込まれていた追加対策費が最大2700億円まで膨れ上がると報道されています(注2)。高浜原発に関しては1、2、3、4号機の追加対策費は3881億円とも報道されました(注3)。さらに、高浜原発1、2号機の再稼働は、追加工事などの都合で2019年10月以降の見込みで、電力が自由化された市場で、運転延長したとしても残りの運転期間で投資を回収できるかは疑問です。ウルリッチは「もし高浜原発1、2号機が重大事故を起こせば、福井、京都、滋賀など関西の広範囲が汚染されてしまいます。老朽原発は本質的に危険であり、関西電力は追加対策費用を費やすのではなく廃炉を決めるべきです」と強調しました。

グリーンピースは3月22日から24日、琵琶湖岸で放射線調査を行い、万が一福井県にある原発で過酷事故が起こった場合に事故由来で放出された放射線量及び核種の比較できるよう、湖底土など堆積物の放射線量を測定して現在の環境中におけるバックグラウンド放射線値を調べました。調査結果の発表は6月以降を予定しています。