グリーンピース、原発事故から5年を前に福島沖で海洋調査を開始――菅直人元首相がグリーンピースの船「虹の戦士号」を訪問

国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは本日、東京電力福島第一原発事故から5年を前に、福島県沖で海洋の放射能汚染の実態調査を2月21日に開始したことを発表しました。調査初日の21日には、福島第一原発事故の際に陣頭指揮を取った菅直人元首相が来日中のグリーンピースの船「虹の戦士号」(855トン、オランダ船籍)に乗船して福島第一原発を海上から視察し、あらためて原発の廃止を訴えました。

菅直人元首相は、「2011年3月11日までは、日本は技術力もあるので、チェルノブイリのような原発事故が起きることはないと信じていました。しかし、実際に起きてしまいました。そして、あと紙一重で、5000万もの人が福島第一原発の250km圏内から逃げなければいけなくなるような、重大な危機に直面したのです。そこで、私は考えを変えました。それだけの大きなリスクのある原発を、これ以上使い続ける必要はありません。将来世代のために、原発ではなく、安全かつ安価でしかもビジネスチャンスのある再生可能エネルギーにシフトすべきだと考えています」と訴えました。

福島県沖での調査は、グリーンピース・ジャパンがチャーターした日本船籍の調査船で実施し、2月21日から3月12日まで、福島第一原発から20キロメートル圏内を含む福島県沖にて実施予定です。ガンマ線スペクトロメーターを使用して海底堆積物の放射線量の測定と放射性物質の核種を調査すると同時に、ROV(遠隔操作探査機)で海底土のサンプリングや写真及び映像の撮影も行います。グリーンピースは福島第一原発事故直後の2011年3月から放射線調査チームを結成し、「ちくりん舎」(NPO法人市民放射能監視センター、東京)とアクロ(ACRO、フランス)の科学者らに協力を得ながら調査を行っています。今回で第26回目の放射線調査となります。

グリーンピース・ドイツ 核問題シニア・スペシャリストのショーン・バーニーは「福島第一原発事故は、海洋への放射性物質が放出された単体の事故として歴史上最大の規模となります。放射性物質がどのように拡散されたり濃縮されるかといった、海洋環境での影響を調べる緊急の必要性があります。東京電力は福島原発事故でトリプルメルトダウンを防ぐことに失敗し、 事故から5年経ってもいまだに収束できていません。東京電力はこの『汚染水危機』を解決する方法だけでなく、太平洋の放射能汚染を食い止めるための有効な手立てを一切提示できていません」と強く批判しました。

グリーンピース・ジャパン エネルギー担当の関口守は「福島の地域社会の現状は、いまだ先が見通せません。放射能汚染により、約10万人が元々住んでいた土地や家に帰還できない状態が続いています。日本政府は原発の再稼動を進めるのではなく、原発事故被害者のことを第一に考え、原発事故の収束に注力すべきです。いま、多くの人々が原発で発電された電気を使いたくないと考えています。安全でかつ環境汚染の少ない自然エネルギーこそ、原発事故を経験した私たちのニーズにこたえるエネルギーです」と述べました。

グリーンピースは、再稼働手続き中の原発立地自治体の知事と安倍首相宛てに原発再稼働の停止を求める「とめよう再稼働」署名を2013年11月から実施し、2月23日時点で40,917筆が集まっています。