11月30日からフランス・パリで開催されていたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で、12月12日、2020年以降の気候変動対策の国際的な枠組み『パリ協定』が採択されたことを受けて、グリーンピース・インターナショナル(本部)事務局長クミ・ナイドゥは下記の声明を発表しました。この『パリ協定』では、世界の平均気温上昇を産業革命前に比べて1.5度以内に抑えることの必要性が言及されたことと、今世紀後半までに世界全体の温室効果ガス排出量を実質的にゼロにする新目標が合意されました。
「国連加盟国は何についても団結できないといわれることがありますが、200近い国々が団結し、協定の合意に至りました。今日、人類は共通の利害のために合意しましたが、本当に重要なのはこの会議以降に起こることです。『パリ協定』は長い道のりのひとつのステップで、苛立ちや失望を感じる部分もあるものの、一歩前進したといえます。今回の合意だけでは、いま私たちが置かれている窮地から脱することはできませんが、その困難の克服を容易にすることはできます。

『パリ協定』は、世界の平均気温上昇を1.5度に抑える目標を設定しましたが、各国政府が表明した削減目標をふまえると、ほぼ3度の気温上昇が予想されます。これは深刻な問題ですが解決策はあります。それは、『パリ協定』で言及された唯一の技術、自然エネルギーです。自然エネルギーはすでに全世界で導入されていますが、いまが節目の時期です。合意のなかには埋めなければならない隔たりがありますが、クリーンな技術によって橋渡しがされるべきです。私たちは自然エネルギー導入と気温上昇の競争のはざまにあり、『パリ協定』は自然エネルギーに追い風となります。気候変動対策は遅々として進みませんでしたが、COP21ではようやく動き出しました。

気候変動の影響によりすでに失われた命にとって、そして気温上昇による危機に瀕している人々にとっては、これは勝利の瞬間ではなく、緊急対策をとるべき時です。気候変動の時計は刻々と時を刻み、緊急対策をとる機会は早くも閉ざされようとしています。

各国政府は、長期目標に沿って排出量削減の短期目標を修正するだけでなく、自然エネルギー導入を加速するためにエネルギー政策も修正する必要があります。また、各国政府は2020年までに化石燃料への投資と森林破壊を止めるべきです。

『パリ協定』は国際法のもとの合意で、法的な拘束力があります。しかし、各国の排出量削減目標には法的な拘束力も、財政的な義務もありません。米国が合意に参加できたのは、主にこのためです。

『長期目標』は一見理解しにくい文章ですが(「人間活動による温室効果ガスの排出と吸収の均衡を取る」)、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して1.5度以内に抑えること、2060~2080年には世界全体の温室効果ガスを実質的にゼロにすることが協定に含まれています。これは、2050年までに脱化石燃料をする必要があることを意味しています。

『パリ協定』の序文と『適応』章には、先住民族の権利についても盛り込まれています。しかし、気温上昇を1.5度以内に抑えることを達成するために鍵となる森林保護の観点からは、彼らは十分な保護を受けていません。『パリ協定』は、気候変動への取り組みに際して、各国政府が人権の尊重、そして擁護をする必要性があることを認めています。

COP21の交渉期間中、議場の外でも、自然エネルギーに関するよい取り組みが見られました。例えば、インドの太陽光発電に対する取り組み、アフリカ自然エネルギーイニシアティブの発足、1000以上の地方自治体の首長による自然エネルギー100%への支援表明などです。協定では、自然エネルギーの導入強化によって新興国、特にアフリカでの持続可能なエネルギーへの普遍的なアクセスを促進できることが強調されています」。





国際環境NGOグリーンピース・ジャパン