国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは本日、農林水産省が三年計画のミツバチ被害調査の二年目にあたる「平成 26 年度蜜蜂被害事例調査結果」(注1)を6月23日に発表したことを受け、下記の声明を発表しました。




調査結果では、ネオニコチノイドを始めとする農薬散布とミツバチ被害との関連があらためて確認され、昨年同省がとった農薬散布情報の共有という対策が効果を上げていないことが示されたといえます。また、死んだハチからの検出件数が最も多かったのはネオニコチノイド系農薬(なかでもクロチアニジンが最多)です。野生のハチをはじめとした授粉昆虫への影響を防ぐことは全くできず、実りを支える授粉への悪影響を全く認識していません。

グリーンピースはこうした対症療法的な対応を批判し、ミツバチに有害な殺虫剤の即時禁止と唯一の根本的な対策として生態系農業へのシフトを求めます。同時にグリーンピースは本日、ミツバチを守り化学農薬に頼らない方法を提言した新レポート「Plan Bee無農薬の生活-生態系農業への移行」日本語要約版を発表しました(注2)。

また、世界の最近の研究報告によると、農薬と健康への影響の関連を示す証拠は増えており、特に化学物質の影響に弱い胎児や子ども、農薬の曝露の多い農業従事者がハイリスクであることがわかってきました(注3)。

グリーンピース・ジャパンの食と農業担当の関根彩子は「農林水産省の進めている、農薬散布情報を共有して“巣箱を移動させる”方法は問題の解決になっていないことが、同省自らの調査で明らかになりました。それどころか、同省はネオニコチノイド系農薬(特にクロチアニジン)の使用範囲や使用量の大幅な拡大を決定しており、残留農薬基準緩和とあわせ、問題をさらに悪化させています。同省は、ただちに疑わしい農薬の使用を禁止すべきです。

ネオニコチノイドを始めミツバチに有害な農薬を水稲の花の時期に大量散布する必要性は疑問視されており、消費者のみならず、秋田や岩手など生産県の県議会からも意見書があがっています。圃場やその周辺の生物多様性を豊かにするなど、自然の力を利用する技術を駆使することによって、化学農薬にたよらない健全な食料生産が可能であることはすでに多くの研究や国内外の実践によって確認されています。同省の対策は、農薬を使わず、解決策へとシフトする機会を遅らせ、農業の大切なパートナーであるミツバチや人の健康を損ない続けるものです。」と述べました。

グリーンピース新レポート「Plan Bee無農薬の生活-生態系農業への移行」はこうした知見をまとめ、生態系農業を推進するよう提言しています。またグリーンピースでは、ミツバチや子どもに有害性の強い農薬の禁止と生態系農業推進のため、 「子ども・ミツバチ保護法を求める署名」(注4)を実施しています。



(注1)農林水産省平成 26 年度蜜蜂被害事例調査結果
(注2)グリーンピースレポート「Plan Bee無農薬の生活-生態系農業への移行」
(注3)グリーンピースレポート 「農薬と健康—高まる懸念」
(注4) 「子ども・ミツバチ保護法を求める署名」


国際環境NGOグリーンピース・ジャパン