国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは本日、新レポート「農薬と健康—高まる懸念」の日本語版を発表しました。パーキンソン病、自己免疫疾患、悪性リンパ腫、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などは、従来の工業型農業で広く使用される農薬が引き起こす病状の例として挙げられます。直接の因果関係を証明することは難しくても、可能性は排除されていません。本レポートは、農薬の健康影響として「確定した既知の影響」と「不確実な影響」の両面から世界の研究例について考察し、総合的に評価し、特に農業従事者、子ども、胎児への健康リスクを高めると警告しています。




特に曝露が多い集団は農業や園芸従事者などで、脆弱性が高いのは胎児と子どもです。健康への影響が指摘されながらも日本で農薬として認められているのは、ネオニコチノイド系農薬、グリホサート、クロルピリホスなどが挙げられます。多くの病気は複数の原因が考えられ、特定の化学物質を突き止めることは容易ではなく、日本政府もこのことを特定の農薬の規制に踏み切らない「口実」としてきました。しかしながら多くの研究は神経・免疫系障害や複数のがんと農薬への曝露との関連性を示しています。

レポート「農薬と健康—高まる懸念」日本語版
(英語名「Pesticide and our Health -a growing concern」)


第一章   緒言
第二章   農薬の曝露と関連づけられた健康への影響
第三章   工業型農業ー野生生物生息地に及ぼす影響
第四章   結論
第五章   解決策
第六章   参考文献


国際環境NGOグリーンピース・ジャパン 食と農業担当 関根彩子は「農薬の悪影響はミツバチにとどまらず、人の健康にも及ぶことが明らかになっています。懸念すべきは、日本は世界の中でも農薬使用量が高く、日本政府は健康被害対策を後回しにするばかりか農薬の使用拡大及び食品残留基準緩和を続けていることです。ある種の農薬散布がミツバチの大量死や、生態系に甚大な被害を引き起こすことを示す科学的根拠は増えていますが、日本政府は先月19日に、子どもの脳の発達への悪影響の懸念やミツバチに致死性のあるネオニコチノイド系農薬の使用拡大を認可しました。農薬がもたらす人や環境への悪影響が明らかになればなるほど、農薬漬けの工業型農業から、農薬に頼らない食糧生産システムである『生態系農業』への一刻も早いシフトが必要です。生態系農業の推進なしには、最も高いリスクにさらされる子どもたちの健康的な未来を約束することはできません」と訴えました。


グリーンピースではミツバチと子どもの健康を守るため、国会議員に向けて『子ども・ミツバチ保護法を求める署名』を行っています(注)。生態系農業という実現可能な解決策を政府が進めていくことを求め、活動を続けています。
注)「No Bees,No Food.『子ども・ミツバチ保護法』を求める署名」


国際環境NGOグリーンピース・ジャパン