国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは本日、国際自然保護連合(IUCN)に助言する科学者グループ「浸透性農薬タスクフォース」が、ミツバチだけでなく水生昆虫や土壌生物、鳥類など広い範囲の生物に有害な影響を与えている証拠を調査した「浸透性農薬の生物多様性と生態系への影響に関する世界的な統合評価書」の日本語版(注1)が公表されたことを受けて下記の声明を発表しました。この評価書は2014年6月に英語で発表され、ネオニコチノイドなどの浸透性農薬の影響について、世界の専門科学者30人が1,121編という膨大な数の学術論文を評価した包括的な報告書です。ネオニコチノイド系農薬の使用は環境への残留性の高さ、そして広範囲の生態系に悪影響を与えていることから、「持続可能ではない」と警告しています。



国際環境NGOグリーンピース・ジャパン 食と農業担当 関根彩子
「こうした研究が日本でだれにでも読める形で提供された意義は大きく、この評価ならびに日本語版作成に尽力したネオニコチノイド研究会の皆様に敬意を表します。この報告書による警告を日本の政策決定者は厳粛にうけとめ、今すぐ規制を導入すべきです。さらに、企業、農業関係者、自治体などは各々の責任ある立場で今すぐ行動を開始することが必要です。


英語版が発表されて以降も、ネオニコチノイド系農薬の生態系への影響に関する科学的証拠は増え続けており、事態は急を要します。EUが2013年末に同農薬使用の一部禁止を決め、2014年には韓国が続き、2015年にはアメリカも新たな使用を認めない方針を発表しました。一方日本では、同農薬の開発や製造に携わってきたメーカー(住友化学、日本曹達、三井化学アグロ) がこれらの農薬の使用範囲の拡大や残留基準の緩和を求め続けてきました。日本政府は企業への際限ない譲歩をやめ、規制を導入すべきです。

そして、ネオニコチノイドは残留性が高く、水に溶けて作物に吸収されるため、 日本では“農薬をまく回数を減らす”という名目で『特別栽培』などの環境保全型農業に用いられるなど、本末転倒な使用が続いてきました。これが重大な間違いであることを、生産者も消費者もはっきり認識すべきです」。

子どもの健康への影響が懸念され、ミツバチなどの益虫に被害を与えているネオニコチノイドをはじめとする浸透性農薬を一刻も早く禁止し、生態系に調和した農業へ一日も早くシフトすることが必要です。この実現のため、グリーンピースは政策決定者が、食の安全と子どもの健康、そして健全な環境を守れる法律を作るよう「子ども・ミツバチ保護法を求める署名」を4月から実施しています(注2)。

注1)日本語版は報告書の一部の執筆も担当したネオニコチノイド研究会が一般社団法人アクト・ビヨンド・トラストの助成を受けてWorldwide Integrated Assessmentを完訳したもの。
日本語版リンク:http://www.actbeyondtrust.org/report/1928/


注2)「No Bees,No Food.『子ども・ミツバチ保護法』を求める署名」概要
時期:2015年4月8日(水)から10月まで(予定)
内容:国会議員(CC:農林水産大臣と厚生労働大臣)に、食べ物の安全や子どもの健康、ミツバチなど花粉媒介生物を農薬の影響から守る法律の策定、生態系に調和した農業の価値評価・支援強化を求める。
署名ウェブサイト:www.greenpeace.org/japan/ja/Action/NoBees/



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