国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは、本日4月13日、『消費者のための「電気のラベル表示」を』ブリーフィング・ペーパーを発表しました(注1)。本ブリーフィング・ペーパーは、食品などの“原材料表示ラベル”のように、電力会社の電気料金請求書などに「電源構成」、「二酸化炭素排出量」、「放射性廃棄物量」の表示の義務化を、行政機関と、新電力を含めた全ての電力会社に提案しています。2016年4月の電力小売全面自由化を1年後にひかえ、消費者が電力会社を選択するためには、情報の開示ならびに表示が必要不可欠であるとしています。同時にドイツの電力市場自由化の過程における消費者への情報表示について、安全で持続可能なエネルギーを消費者が選択しながら促進するための、先進事例として紹介します。なお、EU加盟28カ国のうち26カ国で電力の情報表示が法律に基づいて実施・運用されています。
電力の小売全面自由化に伴い、10電力会社の地域独占が解消されます。同時に、7.5兆円の巨大市場が創出されることが見込まれ、2015年3月末時点で600社近い企業が特定規模電気事業者として経済産業省に登録しています。一般家庭でも電力会社の選択が可能になることから、法制度の整備とともに、消費者が電力会社を選ぶための環境整備が待たれます。本ブリーフィング・ペーパーでグリーンピースが提案する電力会社の情報開示・表示義務化は、すでにドイツで請求書や広告等への表示が義務化されている以下の三点です。

1) 前年度の「電源構成(%)」:消費者の支払う電気料金がどのような発電方法に使われるのかを把握。グリーンピース提案の電源種別は、「原子力」「火力(石炭、石油、天然ガス)」「大型水力」「固定価格買取制度(FIT)を利用した自然エネルギー」「その他の自然エネルギー(中小水力、太陽光、風力、バイオマス、地熱)」(注2)。

2) 前年度の「二酸化炭素排出量(g/kWh)」:電力会社(一般電気事業者及び特定規模電気事業者)ごとの二酸化炭素の実排出係数・調整後排出係数等は、法律に基づいてすでに公表されていて利用可能(注3)。日本全体の二酸化炭素排出量の平均値も参照値として示されている必要がある。

3) 前年度の「放射性廃棄物量(bq/kWh)」:原子力発電の電気を使用することで放射性廃棄物がどれだけ生じるのかを把握。日本全体の放射性廃棄物量の平均値も、参照値として示される必要がある。

グリーンピース・ジャパン エネルギー担当の柏木愛は「自分の使う電気がどのような発電方法で作られるのか、ヨーロッパでは10年前から当たり前のように消費者が知ることができました。しかし日本では電気に関する情報の表示が不十分で、消費者の視点が置き去りにされています。福島原発事故以降、消費者の電源に対する関心は高まっています。形の見えない電気だからこそ、消費者の視点に立った丁寧な議論と、透明性の高い情報の表示が必要です」と訴えました。

グリーンピースは、「気候変動による深刻な影響を防ぎ、安全で持続可能な自然エネルギー100%の日本を実現すること」を気候変動・エネルギーに関する取り組みの最終目標にしています。消費者が「電気のラベル表示」を元に電力会社を選択することは、そのための重要な一歩だと考えています。

注1) グリーンピース・ジャパン ブリーフィング・ペーパー『消費者のための「電気のラベル表示」を』
注2) FITを利用している場合、自然エネルギーの調達コストは全ての需要家が負担する賦課金を財源とした交付金でまかなわれていることから、FITを利用しない自然エネルギーと分けている。ドイツでも、区別して表示している。
注3) 環境省「平成24年度の電気事業者ごとの実排出係数・調整後排出係数等の公表について」(2013年12月)


国際環境NGOグリーンピース・ジャパン