国際環境NGOグリーンピースは12月5日、サモア独立国で1日から開催されていた第11回WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)年次会合が閉幕したことを受けて、緊急を要する熱帯マグロ類の資源管理保護措置の強化に失敗したとし、下記の声明を発表しました。また、刺身用マグロの一大消費国である日本の市場、特に大手スーパーマーケットなどは、国際機関や行政指導に従うだけでなく、予防原則に基づいて『持続可能な魚介類の調達方針』を策定・実施する自発的な取り組みが不可欠であると訴えました。
グリーンピース・ジャパン 海洋生態系担当 花岡和佳男

「今回の会合では、初期資源の4%にまで激減した絶滅危惧種・太平洋クロマグロにおいて、9月に行われたWCPFC北小委員会で合意された未成魚の漁獲量半減(2002_2004年平均比)の措置が採択され、ようやく第一歩を踏み出すこととなりました。しかし、メバチマグロなど熱帯マグロ類の保護管理の強化においては、加盟各国が漁業データを科学機関に提出する措置が採択されたのみで、実際に漁獲量や環境負荷を減らす直接的実行力のある案は一つも合意に至りませんでした。メバチマグロも絶滅危惧種に指定されており、初期資源の16%しか海に残っていません。また、日本周辺海域での漁獲量激減が深刻なカツオにおいても、目標管理基準値すら決まりませんでした。

中西部太平洋におけるマグロ類の資源管理を管轄するWCPFCの年次会合は、本来は激減するマグロ類をいかに資源回復させ漁業の持続性を確保するかを話し合う場であり、限りある資源を獲れるうちにどの国がどれほど獲るかを決める場ではないはずです。資源回復や持続性確保ではなく『漁業崩壊へのシナリオ』を描くような、今のWCPFCに頼り切っていては、子どもたちの海と食卓にマグロ類を残すことは難しいでしょう」。

また、日本は刺身用マグロ等において世界生産量の約80%を消費する一大市場国です。特に、大手スーパーマーケットや回転寿司チェーン等は、マグロ類の激減に大きな責任があります。市場側のステークホルダーは国際機関や行政の指導を待ち従うだけでなく、生態系、漁業、そして和食の持続性確保を目的に、予防原則に基づき、以下3項目を含む『持続可能な魚介類の調達方針』を自発的かつ積極的に策定・実施する必要があります。

1. 絶滅危惧種や過剰漁獲されている種の取扱いを控える

2. 持続性が確保されている魚介類を積極的に取り扱う

3. 生態系、漁業、和食の持続性確保に積極的に貢献する

グリーンピースは、国内大手スーパーマーケット5社を対象に、魚介類販売に関して持続可能性を追求する方針や取り組みを評価・比較した『お魚スーパーマーケットランキング』を定期的に発表しています。12月17日に最新版を発表する予定です。各社はこのランキングで上位を目指すことにより、生態系、漁業、和食の持続性確保へ向けた取り組みを強化することができます。

グリーンピース・ジャパン 海洋生態系担当の小松原和恵は、「スーパーマーケットや回転寿司店だけでなく、そのサプライチェーンを形成する水産会社や商社等も、方針・取り組みを緊急に改善する必要があります。さらに、消費者も環境負荷を配慮した消費を心掛けなければ、子どもたちや次の世代にマグロを残すことは難しいでしょう」と警鐘を鳴らしました。



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