2014年9月1日から4日まで福岡で開催されていた中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)第10回北小委員会は、議題の中心となった太平洋クロマグロにおいて、未成魚(30kg未満)の漁獲量を2002-2004年平均値の50%に削減する管理措置と、10年で産卵親魚量を歴史的中間値(42,592トン)に60%以上の確率で回復させることを初期目標とした暫定複数年回復計画などに国際合意を得て閉幕しました。これを受けて、9月4日、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは下記の声明を発表しました。

グリーンピース・ジャパン 海洋生態系担当 花岡和佳男

「乱獲により資源量が過去最低レベルにまで落ち、初期資源の4%にまで減少した太平洋クロマグロの漁獲量の98%を未成魚(30kg未満)が占める現状において、未成魚の漁獲量を2002-2004年平均値の50%に削減する措置が国際合意されたことは、同種の資源保護管理の第一歩として評価します。

しかし、未成魚の生息数を増やしても、産卵直前にその群れを次々と一網打尽にする漁業が続くようでは、産卵親魚量の回復を目指す資源管理としては片手落ちです。成魚における十分な資源管理シナリオを作成し、産卵親群や産卵海域においても科学的根拠と予防原則に基づいた漁業規制をすることが急務です。現在確認されている同種の産卵海域は全て日本周辺海域にあることから、引き続き日本政府にそのイニシアチブが求められています。

また、今回合意された、10年で産卵親魚量を歴史的中間値(42,592トン)に60%以上の確率で回復させることを初期目標とした暫定複数年回復計画については、その目標数値が初期資源の約7%にしかすぎず、また達成確率の低さにおいても、あまりにも消極的であると指摘せざるを得ません。十分な効果を見込める長期回復計画を早急に策定・実施しなければ、確実に持続性を確保する手段が、禁漁措置しか残りません。グリーンピースは、限界管理基準値を少なくとも初期資源の20%とし、80%以上の確率で達成する回復計画を策定する必要があると考えます。

また、日本は太平洋クロマグロの世界最大の漁業国であると同時に、世界一大市場国です。「本マグロ」を安価で大量調達する薄利多売のビジネスにより作られる需要が、乱獲にアクセルを、漁業規制にブレーキをかけています。グリーンピースは国内大手スーパーマーケット15社に対し、以下3点を要請しています。

未成魚や産卵親群など、資源回復を妨げる漁業による太平洋クロマグロの取り扱いの一時中止
トレーサビリティーが確立されていない太平洋クロマグロの取り扱い中止
持続性確保を最優先とする太平洋クロマグロの資源回復計画への協力
太平洋クロマグロがいつ絶滅危惧種に指定されてもおかしくない状態の中、次世代の食卓に和食を伝承するために、スーパーマーケット等は企業の社会的責任を本業で果たす必要があります。行政主導の漁業規制に頼るだけでなく、積極的に生態系、漁業、そして和食の持続性確保を目的とした『持続可能な魚介類の調達方針』を策定・実施することが急務です。また、消費者も環境負荷を配慮した消費を心掛けなければ、子供たちにマグロを残すことは難しいでしょう。」


国際環境NGOグリーンピース