国際環境NGO グリーンピース・ジャパンは4日、科学レポート「滴る毒」を発表しました(注1)。この科学レポート『滴る毒』は、ネオニコチノイド系農薬を使用して種子処理されたトウモロコシの葉の溢液(いつえき:植物の中を通って葉の先端や縁に現れる水滴状の液)を採取して、そのなかに含まれるネオニコチノイドの量(濃度)を、グリーンピースが計測してまとめたものです。調査の結果、ネオニコチノイド系農薬で種子処理された市販のトウモロコシを慣行農業で栽培した場合、その溢液中には、ミツバチが一度に摂取する水分量(注2)で致死量を上回る濃度の農薬が残留している事が示されました。
EU委員会は2013年12月、ミツバチの保護のために、ネオニコチノイド系農薬(チアメトキサム、イミダクロプリド、クロチアニジン)の使用を2年間にわたり一部禁止する措置を決定しました。しかしこの規制では、ミツバチの好む花をつける作物や、開花時期の散布を避ければ散布も可能であるなど不十分でした。グリーンピースの今回の調査で、EUの規制でさえミツバチへのリスクを十分回避できないことが明らかになりました。

レポート「滴る毒」日本語版 (英語名「Dripping poison」)


第1章:要約
第2章:序論
第3章:溢液とミツバチの関係
第4章:グリーンピースのサンプリング : 方法と結果
第5章:参考文献


EUでは十分ではないがミツバチの保護のために、ネオニコチノイド系農薬の規制に着手しています。一方日本では、2013年からミツバチへの影響について調査が開始されたばかりです。さらに、クロチアニジンに関しては、食品への残留基準値の大幅な緩和が農薬メーカー(住友化学)により申請され、規制緩和の手続きが現在行われています。

グリーンピース・ジャパンで食と農業問題を担当している関根彩子は、「ヨーロッパの規制は十分とは言えませんが、予防原則の観点から一歩を踏み出しています。日本は、世界でもハチなどの花粉媒介に頼る農業の多い国の一つです。政府の打つ対策が遅くなるほどミツバチだけでなく農業全体、そして食の安全を守る観点からも、ネオニコチノイド系農薬の暫定規制や化学農薬に頼らない農業の支援など早急な対策が求められているのです。」と訴えました。

グリーンピース・ジャパンでは同日、毒性の強い農薬を使用せず、有機で栽培している生産者を応援する声を集めるウェブサイト「bee my friend宣言」を立ち上げ(注3)、ネオニコチノイド系農薬の危険性を訴えながら、食の安全と持続可能な農業を進めることを求めて活動を続けています。

注1)レポート「滴る毒」日本語版
注2)ミツバチ一匹が一日に運びえる水分量は1.4~2.7m。(レポート「滴る毒」より)
注3)bee my friend宣言サイト

国際環境NGOグリーンピース