国際環境NGO グリーンピース・ジャパンは18日、新レポート「消えるハチ」を発表しました(注1)。
このレポートは、世界で数の激減や大量死の報告が相次いでいるミツバチについて、各地の研究報告やUNEP(国連環境計画)の報告などに基づき、農薬によるハチへの直接・間接的影響や、ミツバチなど花粉媒介昆虫のもたらす経済価値などをまとめ、ネオニコチノイド系農薬などの使用規制の必要性を訴えたものです。日本語版発行にあたり、2014年4月現在のヨーロッパにおける規制の現状と日本での状況をサマリー(概要)に加筆し、下記6 章で構成されています。

レポート「消えるハチ」日本語版 (英語名「Bees In Decline」)

第一章:農業と生態系保護における、ミツバチ及びその他の重要性
第二章:世界とヨーロッパにおける、ミツバチ及びその他の花粉交配者の状況
第三章:ミツバチの群れの健康に影響を及ぼす主な要因
第四章:殺虫剤
第五章:ミツバチとその他の花粉交配者を守るために私たちができること
第六章:結論と提言


EUではハチの保護のために、ネオニコチノイド系農薬の規制に着手し、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、フィプロニルの使用が暫定的に一部禁止されています。一方日本では、クロチアニジンの食品への残留基準値の大幅な緩和が農薬メーカー(住友化学)により申請されています。これに対しては1600件を超えるパブリックコメントや反対署名の声が厚生労働省に届き、この規制緩和は再審議となっています。

日本語版作成に携わったグリーンピース・ジャパンで食と農業問題を担当している関根彩子は、「日本は花粉交配者に依存する農作物の多い国の一つです。EUや韓国での規制に比べ、日本政府の対応ははるかに遅れています。農薬の使用や残留基準策定に責任のある農林水産省、厚生労働省は再審議を行う中で、ミツバチへの悪影響だけでなく、人への影響についても報告している欧州食品安全機関(EFSA)の科学的見解を真摯に受け止めるべきです」と改めて使用規制の必要を訴えました。また、グリーンピースは同日、農林水産省に要望書を提出しました。

グリーンピース・ジャパンでは4月8日から、食と農業問題の一環として「bee my friend」キャンペーンを展開し(注2)、ネオニコチノイド系農薬の危険性を訴えながら、毒性の強い農薬の使用を減らし、有機農業への転換により、食の安全と持続可能な農業を進めることを求めて活動を続けています。

注1)レポート「消えるハチ」日本語版 (PDFダウンロード)

注2) 「bee my friend」キャンペーン

注3)農林水産省に提出した要望書