国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは7日、情報公開制度で厚生労働省から開示されたネオニコチノイド系農薬クロチアニジンの規制緩和に関するパブリックコメントの内容を公表し(注1)、1件が規制緩和に賛成で、残りの1656件は反対を表明するものであったと発表しました。
また、グリーンピースは同日、農林水産省に対して規制緩和に反対する署名、12,739筆を農林水産大臣宛てに提出し、NGO4団体(グリーンピース、ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議、ネオニコチノイド系農薬中止を求めるネットワーク、反農薬東京グループ)と共に、パブコメの意見を反映し、残留基準の引き上げの即時撤回をするように申し入れを行いました。

このパブリックコメントは、2013年10月から11月に厚生労働省が実施したもので、グリーンピースが情報開示請求をして確認したところ、異例の合計1657件(メール1650件、FAX 7件)の意見が集まり、そのうち1件が賛成で、残りの1656件は反対を表明するものでした。意見の中には、食品の安全の問題のみならず、ミツバチへの影響を深刻に捉え、残留基準の緩和をしないよう求める意見も多く含まれていました。このため、農林水産省にもこのパブリックコメントを反映するよう求め、その写しを提出しました。

署名は、グリーンピースのウェブサイトで、1月17日から2月13日まで実施され、およそ4週間で12,739筆が集まりました。昨年6月にクロチアニジンの適用拡大と残留基準値の引き上げ案が発表されて以降、多くの市民がその残留基準の高さ、特に幼児への負荷が大きいことに懸念を表明しています。

ヨーロッパでは、ネオニコチノイド系農薬に対しては、2013年12月からクロチアニジン他2種の暫定的一部使用禁止が始まり、欧州食品安全機関(EFSA)が発達神経毒性を重視してADI等の引き下げの勧告や、検証の必要性を指摘するなどの対応が進んでいます。今月からはフィプロニル処理した種子の使用の暫定使用禁止が始まっています。また、韓国でもネオニコチノイド系農薬の新規登録および登録変更が暫定的に規制され、ミツバチ被害に対する警告強化を始めるとしています。

ヨーロッパにおいては、ミツバチの大量死に影響を及ぼし、安全とは言いきれないとして予防原則に基づいて措置がとられましたが、一方日本においては、農林水産省農産安全管理課の担当者は、「予防原則と呼ぶのかわかりませんが、リスク評価と、リスク管理は行っている」と言及するにとどまり、予防原則にのっとって農薬規制のプロセスを踏んでおらず、農薬メーカーの利益だけを考えて、農薬登録を行っており、基準を上げてほしくないという市民の声は無視されている現状が改めて浮き彫りになりました。

署名を手渡したグリーンピース・ジャパン事務局長の佐藤潤一は、「日本では世界の流れと逆行して、適用拡大と残留基準の緩和が進められようとしています。農薬メーカーの一方的な声を聞いて、農薬登録・規制緩和をするのであれば、消費者の声を聞いて、引き下げるもしくは、使用を止めさせる仕組みも必要だ。日本も予防原則に基づいて、安全性が確認されるまで一時使用禁止にするべきだ」と語り、農薬がすでに広く使われるようになった後で毒性が問題となり、規制が後手に回るという誤りをこれ以上くり返さないよう訴えました。

グリーンピースは毒性の高い農薬の使用中止を呼び掛けるとともに、有機農業への転換を訴えています。

注1) パブコメ

注2) 要請書