【北京発】国際環境NGOグリーンピースは本日6月24日、北京で記者会見を開き、中国国内で調査した65の中国漢方薬草商品から高濃度の残留農薬を検出したと発表しました。検出された農薬の中には中国で使用が禁止されているものも含まれます。グリーンピースは、工業型農業が依存する農薬の危険性を指摘し、その使用中止と有機農業への転換を訴えています。
本日、グリーンピース・東アジアが発表したレポート「中国漢方薬草:健康の妙薬、それとも農薬カクテル?(Chinese herbs: elixir of health or pesticides cocktail?)」(注)では、世界保健機関(WHO)によって危険性が高いと指摘されている残留農薬が中国の漢方に使われる薬草から検出されたことを示しています。サンプルの中には残留農薬がEUの食品安全基準の500倍となるものも含まれています。

グリーンピース・東アジアの有機農業担当のJing Wangは「この調査結果は、人間の健康や環境というものを犠牲にしながら行われる工業型農業の問題を浮き彫りにしています」と述べました。

さらに「中国漢方薬草は、世界中で何百万人もの人に健康のための食品原料として愛され続けてきています。また中国の象徴として先祖代々受け継がれてきたものです。中国漢方薬草は、人々に危害をあたえるものではなく、人々をいやすものです。だからこそ無農薬であってほしい」と続けました。

今回調査した中国漢方薬草は、2012年8月から2013年4月に中国の9つの都市で、TongrentangやYunnanbaiyaoなどの9つの店舗で購入したものです。調査した中国漢方薬草には、クコ、ハニーサックル、菊、サンシチニンジンなどが含まれ、調査した65サンプルから51種類の残留農薬を検出。また、中国国内で違法な6種類(ホレート、カルボフラン、フィプロニル、メタミドホス、アルジカルブ、エトプロポス)の農薬を全サンプル中40%となる26サンプルで検出しました。

残留農薬が含まれる食品を長期にわたって摂取し続ければ、体内に有害化学物質が蓄積される可能性があります。また、農薬による慢性中毒は集中障害、ホルモン攪乱、生殖機能異常などの被害をもたらす可能性があります。世界中の年間農薬生産量は2000年から2009年までの10年間で倍増しており、さらに2050年までには年間約3%の割合で増え続けると予想されています。

グリーンピースは、中国政府に対して農薬使用における規制を強化すること、農業における農薬削減計画を策定すること、そして有機農業の拡大のために十分な資金的援助を行うことを訴えています。また、漢方薬草を生産している企業に対しては、使用しているすべての農薬の種類と使用量、そして農薬の削減計画を公開するように求めています。

グリーンピース・ジャパンの事務局長 佐藤潤一は「農薬問題は中国だけの問題、過去の問題ではありません。現在進行形で、国内でも大量に利用されているネオニコチノイド系農薬がミツバチなどの生態を脅かしています。農薬に依存しない有機農業こそが環境も健康も脅かさない21世紀にふさわしい農業です」と述べました。

【調査レポートの要旨】
・ 65サンプルを調査し、合計51種類の残留農薬を検出
・中国国内で違法な6種類(ホレート、カルボフラン、フィプロニル、メタミドホス、アルジカルブ、エトプロポス)の農薬を26サンプルで検出(全サンプル中40%の割合)
・ WHOによって「極めて有害」、もしくは「有害性が高い」とされる農薬のうち10種類の農薬を26サンプル(全サンプル中40%の割合)で検出。そのうちクラスIa(極めて有害)とされる農薬は、アルジカルブ、エトプロポス、ホレートで、クラスIb(有害性が高い)とされる農薬は、カーボフラン、シフルトリン、メタミドホス、メチダチオン、メソミル、オメトエート、トリアゾホス
・ 極めて高濃度の残留農薬も検出。サンシチニンジンには殺菌剤として使用されるチオファネートメチルがEUの定める残留農薬基準の500倍の濃度で検出。同様に、ハニーサックルでは100倍の濃度で検出。

注) 「中国漢方薬草:健康の妙薬、それとも農薬カクテル?」(Chinese herbs: elixir of health or pesticides cocktail?)」(英語)




国際環境NGO グリーンピース・ジャパン