南太平洋で違法漁業や過剰漁業の監視を行っている国際環境NGO グリーンピースのキャンペーン船エスペランサ号は15日、パシフィックコモンズ(注1)と呼ばれる太平洋島しょ国の排他的経済水域(EEZ)に囲まれた公海で、カンボジア船籍の冷凍運搬船、フィリピン船籍の漁船、そして2隻のインドネシア船籍の漁船(注2)による、マグロやカツオの大規模な違法洋上転載の現場を発見しました。
これら4隻の船はいずれも、太平洋中西部のマグロ・カツオ類の資源管理を行う「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」の漁船リストに登録されておらず、この海域で漁業を行う許可を得ていません。WCPFCはこの海域での無登録船による漁獲や洋上転載を禁止しているため(注3)、WCPFCの規則を遵守する必要のあるフィリピンやインドネシアの無登録漁船による今回の行為は明らかな違法行為であり、またカンボジアはWCPFCに加盟していないため、この冷凍運搬は規制の網を潜り抜けて行われているものです。グリーンピースはこれら複数の船籍による大規模な違法漁業の一部始終をビデオおよび写真に収め、証拠として関係政府及びWCPFCに提出しました。

グリーンピースはこのカンボジア船籍の冷凍運搬船に乗り、カツオ節やツナ缶などの原料となる大量の冷凍カツオや、国際自然保護連合(IUCN)により準絶滅危惧種に指定されているキハダマグロなどが積まれていることを確認しました。規制の網を抜け複数の船籍による大規模な違法漁業を行うこの船は、2012年内だけでも鹿児島港や下関港など日本の港に何度も寄港した履歴があります。

グリーンピース・ジャパン海洋生態系問題担当の花岡和佳男は、「パシフィックコモンズは監視の目が甘く、島しょ国に入漁料を支払うことを避けたい漁船や運搬船による違法行為が特に行われやすい海域です。WCPFCは違法漁業が絶えないこの海域を海洋保護区とし禁漁区に設定すべきであり、加盟各国及び漁業国はWCPFCの規制を遵守する必要があります」と話しました。さらに、「国際管理の網の目を抜けて行われる違法や過剰な漁業は、海からだけでなく私たちの食卓からも魚を奪うものであり、漁業者から職を奪うものでもあります。日本政府は、日本船籍にWCPFCによる規制の順守を徹底させることはもちろん、世界有数の魚介類市場国として、合法であることが確認された魚介類以外を国内市場から排除する体制も強化していくことが求められています」と訴えました。

太平洋では、世界のマグロ・カツオ類の総漁獲量の約70%が獲られています。海洋生態系を守り漁業と魚食の持続可能性を求めるグリーンピースは、12月2日から7日までフィリピン・マニラで第9回年次会合を開くWCPFCに対して、パシフィックコモンズを禁漁区に指定すると同時に、まき網漁業による人工集魚装置(FAD)の使用禁止と、メバチマグロの漁獲量を50%減とする漁業規制の強化を求めています。

注1) パシフィックコモンズについて
注2) インドネシア船籍の漁船(KM Starcki 10とKM Starcki11)
フィリピン船籍の漁船(Sal 19)
カンボジア船籍の冷凍運搬船(MV Heng Xing 1)
注3) WCPFC Conservation and Management Measure 2009-01:, para. 16: “any vessel not included in the WCPFC Record of Fishing Vessels shall be deemed not to be authorized to fish for, retain on board, transship or land highly migratory fish stocks in the Convention Area beyond the national jurisdiction of its flag State.” According to footnote two, this measure applies to cooperating non-members too, such as Indonesia.

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国際環境NGOグリーンピース・ジャパン