国際環境NGOグリーンピースは京都府が国に対して原子力発電所事故に備える住民避難計画のためにSPEEDI(放射性物質の拡散状況を予測する緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)のデータ提供を国に求める方針を歓迎します。

事故が起こった直後に放射能がどう拡散するかを予測するために開発されたSPEEDIは、事故が起こる前に、事故を想定して放射性物質の拡散をシミュレーションすることができるシステムです。よって、各地の原発で、福島原発のような事故を想定して、地域に特徴的な風況や地形のデータを入力すれば、過酷事故が発生したとき、その地域ではどのような放射能汚染がおきるかを事前に予測することもできます。しかし、こうした原発の大事故を想定したリスクに関する情報が国民に提供されたことはなく、このことが、これまで原発の是非に関する公正な判断を妨げてきました。

京都府は、再稼働が一番早いとみられている大飯原子力発電所の緊急防護措置区域(UPZと略。原発の半径30キロ圏内)を含む自治体の一つであり、グリーンピースでは1月末に、京都府に対して、過酷事故を想定したSPEEDI予測を入手する必要性について働きかけをしてきました。今回の京都府の方針に関して、エネルギー担当の関根彩子は「再稼働の是非を判断するには、地域の住民や自治体が、過酷事故がおきたときのリスクを十分に知ることが欠かせない。京都府の方針により、原発再稼働の是非を問うための公正な機会が整うことを期待します」と述べています。

SPEEDIによる大事故を想定した被害予測は、立地自治体並みの権限をもつ安全協定を電力事業者と結ぼうとしている近接自治体や住民をはじめ、原発の再稼働をめぐるあらゆるステークホルダーが、知る必要があります。しかし文部科学省はSPEEDIに130億円の構築費と年間7億円の運営費(税金)を投じてきたにもかかわらず、住民のためのシミュレーションのためにはSPEEDIを活用してきませんでした。そこで、グリーンピースでは、全国の原発について、大事故の被害予測とその公表を文部科学大臣に求める緊急オンライン署名を開始しました。詳しくはこちら

グリーンピースはひきつづき、「原発フリーの夏」を実現するために、キャンペーンを展開していきます。

参考:グリーンピースでは過去に避難訓練のためにシミュレーションされたSPEEDIのマップについても、昨年から文部科学省に情報開示請求するなどの交渉をつづけてきており、現在それらは、文部科学省のウェブサイトで公開されています。


お問い合わせ:国際環境NGOグリーンピース・ジャパン