昨年12月に日本政府が「冷温停止状態」という特殊な定義を宣言し、IAEA事務局長がそれを追認、歓迎した際にも、IAEAの客観性と科学的中立性には大きな疑問がなげかけられました。IAEAは国連の機関ですが、実際には原子力の推進と拡大を明確な目的としています。IAEA憲章の第2条(目的)にも、この機関は世界中で原子力の平和、健康、繁栄のための利用を加速し増大させることをめざす旨が明記され、IAEAが客観的に規制してきたのは原子力の軍事利用のみであることは明確です(注1)。IAEAの一般的な基準はどの国でも受け入れやすいような非常に低いものであり、日本のような地震の多く、しかも最近急増している国に適用することは安全性の保証にはなりません。
先日18日の原子力安全・保安院によるストレステストの意見聴取会では、再稼働は「妥当」という評価が下されましたが、これは、規格・審査基準が設定されていない上、各電力会社が自ら実施し、原発産業からお金をもらっている委員を含む原子力安全保安院や原子力安全委員会が、最終的には密室で評価や確認をしたもので、中立性も信頼性もありません。ここにきて、またもや中立な立場で判断が下すことが難しいIAEAが来日し、技術上の安全を審査する最後のプロセスを踏もうとしています。
ストレステストの意見聴取会では、中立的な立場の委員から、審査基準が無いことに加え、ストレステストが格納容器内水素に関して評価していないこと、津波による浮遊物によって原発がうける影響や原子炉建屋外の大規模火災の場合を評価していないことをはじめ、数々の不備が指摘されています。 このような問題をIAEAが見過ごし、原子力安全保安院の評価をそのまま追認してお墨付きを与えてしまうようなことになれば、このあと他の原発のストレステスト審査でも、大飯原発と同じようなずさんな評価が繰り返され、安全性に疑問のある原発が各地で稼働してしまうことになります。
グリーンピースは、今回のIAEA調査団の結果は決して原発再稼動への安全性を担保するものではなく、ストレステストは審査基準と福島の事故原因を反映できるまで凍結すべきであると考えます。
注1)「外務省、国際原子力機関(IAEA)」より
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