国際環境NGOグリーンピースは8月9日、福島第一原子力発電所周辺で実施した、海産物の放射線調査(注1)において、福島県いわき市の小名浜港で採取したアイナメやクロメバルなどの魚から、暫定規制値を超える放射性物質を検出したことを発表しました。これを受け、日本政府に対して魚介類のモニタリングおよび流通規制の強化と、小売店における魚介類商品の放射能汚染の数値と漁獲海域の表示義務化を要請(注2)しました。

この要請は、8月中に福島県で刺し網漁の試験操業の開始が見込まれていることや、通常は9月に福島県および茨城県で底引き網漁が解禁されることを受けてのものです。魚介類は牛肉と比較してもトレーサビリティー制度が確立されておらず、これまで販売現場での産地表示もしっかりされていません。現在行われている場当たり的な政府の魚介類調査だけでは、もしこれらの漁業が再開され魚介類が市場に流通した際に、消費者の安全を確保する術がない状態です。

グリーンピースでは、7月22日(金)から24日(日)まで、福島第一原子力発電所を中心に太平洋沿岸の福島県いわき市の小名浜港や勿来港(なこそこう)などを訪れ、現地の漁業関係者の協力のもと海産物(魚類、海草類)のサンプリング調査を実施しました。サンプリングした海産物を、フランス原子力安全機関(ASN)認定機関のアクロ(ACRO)研究所やクリラッド(CRIIRAD)研究所(共にフランス)で核種分析したところ、アイナメ(福島県小名浜港で採取)から1kgあたり749Bqのセシウム(Cs-134 + Cs-137)、クロメバル(福島県小名浜港で採取)から同1,053Bqのセシウム(Cs-134 + Cs-137)など、複数のサンプルから暫定規制値を超える放射性物質を検出しました。

グリーンピース・ジャパンの海洋生態系問題担当の花岡和佳男は、「私たちの調査で採取したすべてのサンプルから放射性物質が検出されており、これは福島沖の放射能汚染が依然として深刻な状態であることを表しています。消費者にとって最大の魚介類購入先であるスーパーマーケットでは、消費者が魚介類購入の際に安全性を把握できるだけの十分な情報が提供されていません。汚染肉牛が大規模に流通してしまったようなことを魚介類でも起こしてしまわぬように、政府は海洋調査を一層強化するとともに、流通現場での放射線量や漁獲海域の表示の義務化を急ぐ必要があります」と語りました。

さらに、「大手総合スーパー2社が肉牛の全頭検査に踏み切ったように、小売業界は政府の対応を待つのではなく、魚介類の放射能汚染においても消費者の安全を一番に考えた流通基準の策定、測定体制の確立 、そしてラベル表示による消費者への情報提供を早急に実施すべきです」と訴えました。

注1)海洋調査による海産物の放射性物質データ

注2)2011年8月9日に日本政府に提出した要請書

調査結果の資料

<参考資料>

■ 調査期間
7月22日(金)から24日(日)までの3日間

■ 調査場所
1. 福島県相馬郡新地町釣師浜港
2. 福島県いわき市久ノ浜港
3. 福島県いわき市四倉港
4. 福島県いわき市小名浜港
5. 福島県いわき市勿来港

■ 調査内容
魚類および海藻類のサンプリングを行い、フランス原子力安全機関(ASN)認定機関のアクロ(ACRO)研究所やクリラッド(CRIIRAD)研究所(共にフランス)にて放射性物質の測定と核種分析。

アクロ研究所[フランス原子力安全機関(ASN)認定機関]からの調査報告書

クリラッド(CRIIRAD)研究所からの調査報告書


■ 調査で使用した測定機材
Geodaris Gamma Spectrometer RT-30
Radex RD1706
Rados MicroCont Contamination Monitor
Mini – monitor 900 ( Probe EP15)
Personal Dosimeters Thermo EPDMK2
TLD Dose Badges

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お問い合わせ:国際環境NGOグリーンピース・ジャパン