【7月12日 仙台】グリーンピース・ジャパンの佐藤潤一と鈴木徹に関するクジラ肉裁判(注1)の控訴審判決が本日7月12日、仙台高等裁判所であり、飯渕進裁判長は青森地方裁判所の一審判決、懲役1年執行猶予3年を維持する判決を下しました。この判決は、政府や大企業の不正に対する市民の「表現の自由」「知る権利」を尊重せず、民主主義の原則に反するものです。
2010年9月に言い渡された青森地裁における一審判決では、調査捕鯨におけるクジラ肉の取扱いに不明朗な点があったこと、さらにその不正が佐藤らの指摘によって改善されたことを認めています。そして、一審判決後の2010年12月には、調査捕鯨を管轄する水産庁自らが、その職員がクジラ肉を不正に調査捕鯨船の運行会社から譲り受けていたことを認め謝罪しました。このように、佐藤らの行為が「公共の利益」に寄与するものであったと認められたことが、二審の判決にどのように影響するかが注目されていました。

判決を受けて佐藤は、「この間の裁判などを通じて、調査捕鯨船における不正が明らかになり、それが改善されてきたことは実質的な成果だ」と述べ、「しかし、不正を厳しく罰するのではなく、不正を指摘する人を厳しく罰する判決を下したことで、仙台高裁の判決は民主主義の大前提を見誤ったものだ。裁判所が、市民の政府や大企業を監視する権利を尊重しなければ、福島第一原発事故への政府や東京電力の不透明な対応や、九州電力のやらせメールのようなことは繰り返される」と訴えました。

調査捕鯨の不正とNGOや市民の「知る権利」が問われているクジラ肉裁判は、国連人権理事会やノーベル平和賞受賞のデズモンド・ツツ名誉大主教、国際人権団体、法律専門家など全世界から注目を集めています。2010年5月に訪日した国連人権高等弁務官のナバネセム・ピレイ氏も、この佐藤と鈴木のケースは「言論と結社の問題だ」と指摘し、「NGOによる調査は、社会にとって重要な役割であり、グリーンピースに限らず一般的に尊重されるべきだ」と強調しています。

クジラ肉裁判主任弁護人の只野靖は、「福島第一原発事故への政府の対応でも明らかになってきたが、市民やメディアに指摘されなければ情報を公開しない大企業や政府のあり方を根本的に変えなければ、真の民主主義はありえない。日本も批准している国際人権自由権規約が定めるように、市民の『表現の自由』や『知る権利』は拡大されなければならない」と語りました。

今後の裁判方針については、弁護団と協議の上、判決を十分に考慮し改めて発表します。

注1)クジラ肉裁判:グリーンピース・ジャパンの佐藤潤一と鈴木徹が調査捕鯨におけるクジラ肉の横領疑惑を追及する中で、公的機関に告発するために横流しの証拠としてダンボール箱入りのクジラ肉を確保したことにより、2008年7月11日に窃盗・建造物侵入罪で青森地裁に起訴された事件の裁判。青森地方裁判所は2010年9月6日、懲役1年執行猶予3年の有罪判決を下し、佐藤らは即日控訴。
注2)水産庁の謝罪に関するグリーンピースのプレスリリース(2010年12月24日) >>

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