グリーンピース・ジャパンは本日、「環境に優しい電機メーカー・ランキング注(1)第16版」の日本語概要版を発表しました。最新ランキングでは、環境問題に関する自らの公約を果たせずにいる企業と、この分野で大きく前進している企業との差が顕著に表れています。後者は有害化学物質の使用を段階的に廃止するとともにエネルギー効率を改善し、古くなった製品を消費者がリサイクルしやすい仕組みを整えています。

今回のランキングではフィリップスが注目を集めました。同社は、史上初のポリ塩化ビニル(PVC)と臭素化難燃剤(BFR)注(2)を排除したテレビ「Econova」を発売。すべての一般消費者向け製品において、これらの有害物質の使用を中止する期限を他のテレビメーカーよりもかなり早い今年末までとしています。新しいテレビ「Econova」はその目標に向けて同社が着実に取り組んでいる証拠と言えます。また、これによってPVCとBFRの有害物質を使わずにテレビを製造することが技術的に可能であることが証明され、他のテレビメーカーも、もはや追随しないわけにはいかないでしょう。

ヒューレット・パッカード(HP)は、PVCを使わないノートパソコン、デスクトップパソコンをすでに数種類販売しており、PVC不使用のプリンターの販売も始めています。エイサー、インドのウィプロ(Wipro)やHCLも、PVCとBFR不使用の新商品を発売しました。一方で、東芝、LGエレクトロニクス、サムスン、デル、レノボは、PVCとBFRを排除したパソコン製品の生産にはまだ至っていません。

今回、東芝は、自ら掲げた公約に関して顧客に誤解を与えた理由で2点目のペナルティポイントが科されました。またマイクロソフトは、PVCやBFRの使用を中止する公約を撤回したため、初めてのペナルティポイントが科されました。この他にもLGエレクトロニクス、サムスン、デル、レノボなど数社が、有害物質の使用中止の公約を果たせていないことから、ペナルティポイントの対象となっています注(3)。

ランキング1位のノキアと2位のソニー・エリクソンは、PVCとBFRだけでなく、アンチモン、ベリリウム、フタル酸エステル類といった有害物質も排除した製品を生産し、他社を引き離して上位を維持しました。

今回のランキングで順位を大きく上げたのは、HP、サムスン、レノボです。サムスンはPVCとBFRの排除をめざす公約を撤回したことで、引き続きペナルティポイントが科されているものの、有害物質分野での取り組みが評価され前回の13位から5位に浮上しました。レノボはエネルギー分野で得点を伸ばしました。

最も順位を落とした企業はアップルですが、これはポイントを失ったからではなく他社が同社を追い越したためです。シャープも同様の理由で順位を落としていることから、他社が活発に環境に配慮した取り組みを革新的に進める中、現状を維持するだけでは不十分であることがうかがえます。

全体の基準の中で、廃棄物とリサイクルは最も各社の取組みの進展が少なかった分野です。しかしパナソニックは、インドでテレビの自主回収・リサイクルプログラムを開始したことから得点しました。同社の取り組みは、OECD諸国以外でテレビを対象とした自主回収・リサイクルプログラムとしては、初の試みとなります。電気機器メーカー業界全体としては、古くなった製品の自主回収プログラムを世界的な展開へと拡大できずにいるのが現状です。新興国や発展途上国におけるe-ウェイストの回収・リサイクルのイニシアティブを取る企業が切実に求められているなかで、パナソニックの取り組みがこの分野を活性化するきっかけとなることが期待されます。
注釈:

(1)このランキングは、2006年8月より4半期ごとに実施しているもので、パソコン、携帯電話、テレビ、ゲーム機器を製造・販売する日本・アジア・欧米の大手メーカー18社を対象に、各社の有害化学物質、リサイクルおよび気候変動への取り組みについて、以下の3の分野における基準を10点満点で評価している。

有害化学物質:有害化学物質を排除することで製品をクリーンにすること
e-ウェイスト:自主回収・リサイクルプログラムなど古くなった製品を生産者の責任として全世界で回収し再利用すること
エネルギー:企業の全世界での操業、また製品が気候変動(地球温暖化)に与える影響を削減すること
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(2)ポリ塩化ビニル(PVC)は一部の電機製品や、ワイヤーおよびケーブルの絶縁体に使われる樹脂である。PVCの生産または焼却処分(もしくは単なる燃焼)時には、塩素化ダイオキシンとフランが排出される。これらの化学物質は環境においての持続性が高く、その多くは非常に低濃度であっても有害である。

サーキットボードやプラスチック製の部品に使われる一部の臭素化難燃剤(BFR)は簡単には分解されないため環境内に蓄積される。BFRの長期的な露出は、学習及び記憶力障害につながる可能性があるだけでなく、甲状腺やエストロゲンホルモンシステムに支障をきたすこともある。また胎内における暴露は、その後の行動障害につながる危険性があると言われている。

(3)東芝、サムスン、LGエレクトロニクス、デル、レノボは、PVCおよびBFRの段階的使用中止に関する公約を撤回したために最新版のランキングにおいても引き続きペナルティの対象となっている。東芝は、公約が果たせないことを認めず、顧客やグリーンピースに誤解を与えたためさらに1 点ペナルティを科された。マイクロソフトは、2010 年末までにPVC とBFR の使用を段階的に中止するとした自社の公約を守れず、初めてペナルティを科せられた。

本件に関するお問い合わせ先
グリーンピース・ジャパン