【5月14日 青森】 グリーンピース・ジャパンの佐藤潤一と鈴木徹に関するクジラ肉裁判(注1)の第6回公判が青森地方裁判所で開かれました。本日の審理内容は、塩漬け高級クジラ肉を自宅へ送っていた日新丸船員(仮称:船員A)と、同僚の「土産クジラ肉」の製造に深くかかわる船員(仮称:船員B) 対する証人尋問でした。午前に船員B、午後から船員Aが証言台に立ちました。

佐藤と鈴木が窃盗罪に問われている高級クジラ肉(塩漬けウネス)は、2人が証拠として確保した段ボール箱に全部で10本入っていたことから、箱の持ち主である船員Aはこれまでの調書で、数名の同僚から「土産」を譲り受け、それを切り分けて10本にしたと本数のつじつまを合わせていました。しかし本日の尋問で、「土産」を譲った人数が二転三転し、さらに船員Bは船員Aへ塩漬けウネスを譲ったと証言したのにもかかわらず、午後の証人尋問で船員Aは「船員Bからはもらっていない」と証言するなど、両者の証言が完全に矛盾しました。

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「ながいプロセスを経てようやく本日、本来の箱の持ち主・船員Aが証人台に立った」彼の証言内容が検察の調書から二転三転していることから、「これらの調書はいったい誰が作った文章なのか非常に疑問に感じた」と語る鈴木徹。裁判後の記者会見にて。
クジラ肉裁判の弁護団は裁判後、船員Aが塩漬けウネスを切り分けた件について、その事実の客観性を求めるためには各ウネスのDNA鑑定と実物の照合が必要であり、公平な裁判のためにも検察側はそれに同意すべきであると、裁判所に塩漬けウネス現物の証拠調べを申し立てました。

船員2名の証言と主な矛盾点は以下の通り。

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「サンプル」と書いた箱を自家用車に積み込んでいる調査捕鯨団の石川創調査団長(当時)(2006年日新丸帰港時)の写真を紹介する日隅弁護士。土産クジラ肉の口裏合わせが崩壊したと指摘。
<船員Bの証言と矛盾点>
船員Bは、日新丸の船上で製造される高級クジラ肉(塩漬けウネス)の製造監督の立場にあり、2008年の検察の調べに対し、日新丸下船前に塩漬けウネスを1本船員Aに譲ったと証言している人物。

船員Bは、本日の証人尋問で計4本の塩漬けウネスを「土産」として共同船舶から配布され、うち1本を船員Aに譲ったと証言。しかし、2008年の調書では配布されたのは7本と答えている。
船員Bは航海終了時の私的に自宅へ送る荷物として、「土産」の塩漬けウネス以外に衣類など日常品を入れた箱は通常2箱になると証言。2008年には6箱を送っている事実を弁護側から指摘され、衣類以外に何を送ったのかとの質問に、私物の宅配は常温であるにもかかわらず、冷凍赤肉や南極の氷を送ったと述べた。
調査のためのサンプルはトラックで運ばれるという証言の後、2006年、日新丸の金沢港帰港時、調査捕鯨団の石川創調査団長(当時)がサンプルと書いた箱を自家用車に積み込んでいる写真を見せられて、説明できなくなる。
船員Bは、日本捕鯨協会の指示により日新丸船上でクジラのベーコンを作っていたと証言し、新たな事実が発覚。税金の投入される国営事業において、事業と無関係のはずの団体が鯨類調査という本来の事業目的以外の指示を出していた。
<船員Aの証言と矛盾>
船員A は、佐藤と鈴木が窃盗罪に問われている箱入りクジラ肉を自宅へ送った本人。

本日の尋問で、船員Bから土産クジラ肉は譲り受けていないと証言。調書によると、船員Aは2008年に譲り受けた人数を1名から2名、さらに4名と変えたが、本日ふたたび3名へと変更。午前に行われた船員Bの証言と完全に食い違った。
2008年、日新丸帰港時、常温で私物の荷物を送っていたのは23名との確認が取れており、本日の船員Aの証言でうち17名が製造手であることが判明(残り6名はなお職種不明)。
船員Aは、箱に入っていた塩漬けウネスは譲り受けたものを切り分けたので10本になっていると調書で述べているが、切り分けたのなら断面の肉の色は異なるはずであることを指摘され、合理的な説明ができなかった。
日新丸に乗船時、ホームセンターで買った分厚いビニール袋と塩5キロを持ち込んだと証言。分厚いビニール袋はゴミ用ではないとも語り、塩5キロは船上の食事用と述べた。約半年の航海で、個人使用のために5キロもの塩が必要になるとは考えにくい。
(注1) クジラ肉裁判:2008年、グリーンピース・ジャパンの職員、佐藤潤一と鈴木徹が調査捕鯨におけるクジラ肉の横領疑惑を追及する中で、公的機関に告発するために横流しの証拠としてダンボール箱入りのクジラ肉を確保したことにより、同年7月11日に窃盗・建造物侵入罪で青森地裁に起訴された事件の裁判。

お問い合わせ: 広報担当 村上京子