【1月15日 青森】 本日、青森地方裁判所にて行われたクジラ肉裁判(注1)の第7回公判前整理手続きの協議で、公判の行方を左右する証拠や証人採用について画期的な決定がなされた。

調査捕鯨を実施する共同船舶株式会社の幹部、さらに捕鯨母船日新丸の船員3名、そして海外の国際人権法の専門家などが証人として尋問されることが決定し、調査捕鯨の不正、そして被告人佐藤潤一と鈴木徹の行為の正当性に大きくかかわるNGOやジャーナリストの権利についても審議が及ぶことになった。

証人採用となった船員の3名とは、裁判の焦点である佐藤と鈴木が確保した23.5キロのクジラ肉入り箱の持ち主と、他2名は土産として配布されたとされるクジラ肉の一部をその船員に譲り渡したと証言する同僚。クジラ肉の譲渡に関わった船員らと共同船舶の幹部が証人として召喚されることで、この裁判が単なる窃盗事件ではなく、調査捕鯨関係者による組織的なクジラ肉の横領の有無についても争われるものとなった。現在、南極海で行われている調査捕鯨が、税金を注ぎ込む国策事業であるにもかかわらず、一部の関係者の利益となっている疑惑にメスが入ることになる。

主任弁護人の海渡雄一は、「焦点を本筋に戻して、被告人の二人が証明したかった調査捕鯨の不正を法廷でしっかり証明したい」とした上で、「外国人であるヨーロッパ人権法の専門家が日本の裁判で採用されたのは画期的」と述べた。

採用された国際人権法の専門家デレク・フォルホーフ教授は、社会の健全なチェック機能を守るため政府の不正を明らかにするNGOやジャーナリストの行為を保障してきたヨーロッパ人権裁判所の判例を研究してきた第一人者であり、「表現の自由」に関わる世界各国の裁判で証言している。

起訴から18カ月間と異例の長期にわたる公判前整理手続きはこれで終了し、2月15日に初公判が行われる。また、それ以降の公判は3月8日から11日まで連続4日間の日程で開廷される予定。 このたびの決定を受けてグリーンピース・ジャパン事務局長の星川淳は、「本日の証人採用でグリーンピースが訴えたかった材料がそろった。日本の民主主義とNGOの未来のためにしっかりと法廷で闘っていきたい」と語り、クジラ肉裁判の重要性を訴えながら公平な審理に期待を寄せた。グリーンピース・ジャパンのホームページ上では近日、この裁判に注目する市民からの声を紹介していく新企画「the ウォッチ!」をスタートする。

the ウォッチ!

注1 クジラ肉裁判:

2008年グリーンピース・ジャパンの職員、佐藤潤一と鈴木徹が調査捕鯨におけるクジラ肉の横領疑惑を調査し、公的機関に告発するために横流しの証拠としてダンボール箱入りのクジラ肉を確保したことで、同年7月11日に窃盗・建造物侵入罪で青森地裁に起訴された事件の裁判。

お問い合わせ:
グリーンピース・ジャパン 広報 村上京子
グリーンピース・インターナショナル Communications Greg McNevin