12月10日、農林水産省は10月の冷蔵水産物流通統計を発表しました。これは全国の主な冷凍倉庫を対象に、毎月の入庫量・出庫量・在庫量を品目別に把握するものですが、これによると以下のようなクジラ肉消費の低迷と、それにともなう在庫の増加傾向が見られます。

クジラ肉の在庫量は10月末現在で4918トン。これは南極海での捕獲数を倍増した2006年の10月末の在庫量4962トンに継いで2番目に高い数値であり、ミンククジラおよそ1230頭分にあたる(ミンククジラ1頭からのクジラ肉を4トンとして計算)。
今年10月末のクジラ肉在庫量は昨年同月より約1000トン増加。この増加幅は過去5年間で最高。
クジラ肉の出庫量は2005年以来最低の3529.4トン。
このような傾向があるなかで、今季の南極海での調査捕鯨において当初の計画書どおり捕獲を行うと最大985頭(ミンククジラ、ナガスクジラ、ザトウクジラ)となり、クジラ肉の在庫は著しく増加することになります。すでに南極海での商業捕鯨再開を希望する元捕鯨会社は存在せず、調査捕鯨の科学性も国際的に非難されていて、この補助金投入事業における必要性の見直しが望まれます。

(資料1)クジラ肉在庫量の推移

出典: 冷蔵水産物流通統計(農林水産省)
http://www.maff.go.jp/www/info/bunrui/bun06.html#tsuki4
(財)日本鯨類研究所 年報・プレスリリース
(資料2)過去10年間のクジラ肉在庫量と供給量の推移
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過去10年間のクジラ肉在庫量と供給量の推移
岡田克也外務大臣は12月10日、オーストラリアABC放送のインタビューに応えて、「鯨肉を食べるのは日本の伝統的な食文化で、オーストラリアはそれを尊重すべきだ」とし、南極海での日本の調査捕鯨に反対するオーストラリア政府を批判しました。しかし、南極海での調査捕鯨は「日本の伝統的な食文化」だから問題ないとする外相の認識は、以下の点で正確ではありません。

調査捕鯨は、「鯨肉」を確保するための事業ではなく、科学調査が目的のはずです。
南極海での捕鯨は油を採る目的でノルウェーの技術を輸入して1934年に始まったものであり、伝統的な古式捕鯨とはまったく違います。
南極海の調査捕鯨で捕獲対象となっているナガスクジラは、絶滅の危機に瀕した種です。
かつて捕鯨産業に従事した日本企業でさえ、南極海の商業捕鯨への再参入の可能性を否定しています。すでに上述したとおり在庫が余っています。
南極海は1994年に国際的に取り決められたクジラ保護区であり、当時の日本もミンククジラ以外の種においてはそれを認めていました。
なお今季も、国際環境NGOグリーンピースは南極海にキャンペーン船を派遣しておりません。また、シーシェパードとはまったく別の団体です。グリーンピースは南極海クジラ保護区を守るため、「天下り」や「ひもつき補助金」など調査捕鯨が抱える「利権構造」について国内議論を促す活動に力を入れています。

お問い合わせ: グリーンピース・ジャパン
広報 成澤薫