【ブラジル・レシフェ】ICCAT(大西洋まぐろ類保存国際委員会)の年次会合が16日、今年もクロマグロの資源回復ができないまま閉幕した。グリーンピースが求め、ICCAT科学委員会も必要性を認めていた大西洋クロマグロの休漁の呼びかけを聞き入れることなく、EU、地中海の漁業国、そして日本などの加盟国は、クロマグロの2010年度の総漁獲可能量を19,950トンから13,500トンに削減するにとどまった。

過剰漁業による被害が深刻な東大西洋クロマグロの資源を2023年までに50%の確率で回復させるには、東大西洋での漁獲枠を8,000トンに制限する必要があるとされている。グリーンピース・ジャパン海洋生態系問題担当の花岡和佳男は、「ICCATでは適切な漁業管理ができないことは、これまでも何度となく証明されてきた。大西洋クロマグロの商業的絶滅を避けるには、国際貿易を禁止することしか道は残されていない」と指摘する。

大西洋クロマグロの国際貿易禁止については、先月モナコ公国がワシントン条約の附属書〜氓ノ同種を記載することを正式に提案し、来年3月のワシントン条約会議で議論となることがほぼ確実視されている。ICCATの科学者は年次会合開催直前、大西洋クロマグロの産卵能力のある親魚の量が、漁業が本格化する前の15%にまで減少している可能性が高いとし、大西洋クロマグロの資源量がワシントン条約附属書〜氓ノ記載するにふさわしい状況まで落ち込んでいることを示していた(注1)。

今回のICCAT会合が守れなかったのはクロマグロだけではない。「死の壁」と呼ばれ、国連総会などで使用が禁止されている遠洋流し網漁のモロッコによる使用が、2012年まで許可された)注2)。これはメカジキ漁のために年間4,000頭のイルカと25,000匹の外洋サメを混獲する漁具である。そのほか、ウミガメや海鳥などの混獲問題に関しても、今回の会合で同意された結果は「この重要な問題に来年取り組む」というものだった。

予防原則とエコシステムアプローチにもとづいて総合的に漁業管理を行う機関と、過剰漁業から生息海域を守る海洋保護区のネットワークとを設立する必要性が、あらためて浮き彫りとなった(注3)。

世界規模で進む過剰・違法漁業が各海域で海の生物多様性を破壊し、将来の漁業と魚食を脅かす中、グリーンピースはその解決策として世界の海の40%を海洋保護区のネットワークでつなぐことをめざしている。

注1)2009年11月9日プレスリリース「ICCAT年次会合が開幕」
注2)外洋流し網は国連総会の決議 (UNGA Resolutions n. 44/255 e n. 46/215)、ICCAT(ICCAT Recommendation 03-04)、地中海漁業一般委員会 (GFCM)、そして欧州連合 (EC Regulation EC/1239/98)により使用禁止が決まっている。
注3)グリーンピース・レポート”Mediterranean marine governance: A vision for a sustainable future”
お問い合わせ:特定非営利活動法人グリーンピース・ジャパン
海洋生態系問題担当:花岡和佳男
広報担当:成澤薫