【11月18日 東京】本日、最高裁判所は、調査捕鯨船団乗組員によるクジラ肉の組織的横領を告発する際に窃盗と建造物侵入罪で起訴されたグリーンピース・ジャパンの職員、佐藤潤一と鈴木徹の弁護団が証拠開示を求め特別抗告していたのに対し、「本件抗告を棄却する」との決定を下した。

弁護団は、佐藤と鈴木の弁護に不可欠な証拠に関し検察官が十分な開示をしていないとして青森地裁、ついで仙台高裁へと証拠開示を求めてきた。しかし、9月28日付で仙台高裁が弁護団の抗告請求を棄却したため、10月5日に最高裁判所に特別抗告を行っていた。特別抗告申立書では、検察官が保有する証拠を不開示とすることは刑事被告人の諸権利を定めた日本国憲法37条2項や国際人権(自由権)規約14条3項(b)などで保障された公平な裁判を受ける権利に違反し、国際的な基準や証拠開示の徹底をめざす鳩山新政権の政策から逸脱していて、時代の流れに逆行するものであると主張した。

2007年には国連の自由権規約委員会が、その解釈基準を定めた「一般的意見32(90)(裁判所の前の平等と公正な裁判を受ける権利)」において、検察官によるあらゆる証拠の開示が公正な裁判を保障するものであることを表明している(注1)。また民主党は、その政策インデックス2009 において「刑事裁判での証拠開示の徹底を図るため、検察官手持ち証拠の一覧表の作成・開示を義務付ける」と述べ、部分的とはいえ改善を約束している。さらにアムネスティー・インターナショナルを含め、世界中から3000人以上の弁護士、個人、団体が最高裁に開示を求める手紙を送付していた(注2)。

弁護人の海渡雄一弁護士は、「米国の最高裁判所では、1963年にすでに検察官が判決に影響するような証拠をすべて開示しなければならないとしている(注3)。それから半世紀が経過しようとしている日本にこのようなシステムがないのは、日本の司法システムがガラパゴス化していることを示すものだ」と、最高裁の決定を批判した。また、グリーンピース・ジャパンの事務局長・星川淳は、「世界中のグリーンピース支部を通じて、日本でNGOの権利を脅かしかねない不公平な裁判が行われていることを知らせ、引き続き公判が公平・公正なものになるよう国際的な関心を集めていきたい」と語った。

次回の公判前整理手続は今週金曜日の11月20日に予定されている。

注1) 2007年には国連の自由権規約委員会が、その解釈基準を定めた「一般的意見32(90)(裁判所の前の平等と公正な裁判を受ける権利)」において、「’適切な便宜’には、文書その他の証拠へのアクセスが含まれなければならない。このアクセスには、あらゆる検察側が被告側に対して法廷で提出する予定のもの、あるいは(被告人の)無罪証明と関連するようなものを含まれなければならない。無罪証明と関連するような素材とは、無罪を確立できるような素材だけでなく、被告人側を助けることができるようなその他の証拠 (例:自白が自発的なものでなかったと示すもの)が含まれると承知されるべきである」と述べている

注2) アムネスティー・インターナショナルから最高裁への手紙

注3) 合衆国最高裁判所は1963年のBrady判例において、「証拠が有罪または懲罰の判決に影響する重要な証拠である場合に、被告人に有利な証拠」を提出する憲法上の義務を有するとし、検察官の証拠開示義務を定めている。

お問い合わせ:特定非営利活動法人グリーンピース・ジャパン
広報:村上京子