本日、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは喜納昌吉参議院議員との連名で、調査捕鯨の副産物である鯨肉の販売について水産庁が情報を不開示にしたことについて異議申し立てを申請、鯨肉販売制度の内容と販売結果の公開を再度求めた。

昨年5月、グリーンピース・ジャパン職員の佐藤潤一と鈴木徹は、毎年5億円の国庫補助金が投入される南極海調査捕鯨(注)において、捕鯨船乗組員による鯨肉の横流しが行われてきた事実を突きとめ、その不正告発のため鯨肉入りダンボールを確保し、横領の証拠品として東京地検に提出した。二人は翌6月に調査手段をめぐって逮捕・起訴され、現在、公判前整理手続きが始まっている。一方、調査捕鯨関係者らによる鯨肉横領の疑惑については、十分な調査もされないまま不起訴となった。

昨年、グリーンピースが鯨肉販売に関する文書の情報公開を請求したのに対し、水産庁が1月16日付で開示した文書は、ほとんどの項目が黒く塗りつぶされていた。

「真っ黒く塗りつぶされた文書は、税金でまかなう国営調査捕鯨の実態がどれほど闇に包まれているかを物語る」――グリーンピース・ジャパン事務局長の星川淳は指摘し、「水産庁から委託を受けて国営事業を行う財団法人日本鯨類研究所と、調査副産物としての鯨肉を独占販売している共同船舶株式会社との契約内容は、納税者である国民に公表されるべきだ」と強調した。同様に佐藤潤一は、「黒塗りにされた鯨肉の販売実績や鯨研と共同船舶の契約書を見て、告発が間違っていなかったと思いました」と語っている。

佐藤と鈴木の弁護団は、公権力の不正を究明しようとした二人の行為は自らの利益目的とはまったく異なり、日本も批准する国際人権(自由権)規約に定められる「表現の自由」によって保護されるべき正当行為だと主張している。

本日、東京都内で行われた記者会見で、国際人権法の分野で著名な弁護士リチャード・ハーベイ氏は、「政府関係者による不正行為の情報について、市民の知る権利は最優先されなければならない。国営事業である調査鯨肉の横領を明らかにした佐藤・鈴木の両名は、日本国民の公共的利益を守るために重要な責任を果たしたといえる」と見解を述べた。

第2回公判前整理手続きは3月23日、青森地方裁判所にて行われる予定。



(注):水産庁が行う調査捕鯨(鯨類捕獲調査)は、毎年5億円以上の国庫補助金が投じられる国営事業で、商業捕鯨の再開を目的としている。かつての民間捕鯨産業は1976年までに撤退し、その後も再参入の可能性を明確に否定している。いくつかの水産企業は調査捕鯨専属会社の株主でもあったが、2006年には株式をすべて手放した。調査捕鯨は国庫補助金だけではまかなえないため、毎年経費の不足分数十億円は、調査の「副産物」である鯨肉の売り上げが充てられている。

詳しくは下記のレポートをご覧ください。

塗りつぶされた鯨肉横領スキャンダル ――「調査捕鯨」の利権構造に迫る〔PDFファイル 868KB〕
情報不開示決定異議申立書〔PDFファイル 224KB〕
情報不開示決定異議申立書(全文)

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グリーンピース・ジャパン 広報 村上
Greenpeace International Communications, Greg McNevin