オーストリアとハンガリーの国内法である「遺伝子組み換え作物栽培禁止令」を無効にしようとするEU(欧州連合)の試みは失敗に終わり、両国は環境や国民のためにならない遺伝子組み換え作物栽培禁止法令を堅持した。

EUでは1998年以降、遺伝子組み換え作物の栽培は一切認可されておらず、それ以前に認可されたモンサント社の殺虫性遺伝子組み換えトウモロコシ(MON810)だけが一部の国で栽培されている。この遺伝子組み換え作物もオーストリアやハンガリーでは栽培が禁止され、事実上GMO-FREE(遺伝子組み換えゼロ)国家となっている。

遺伝子組み換え作物は欧州食品安全機関(EFSA)によって認可されるが、EU加盟国はEU法のもとで国内禁止令を制定できる。今回、これらの国内禁止令の妥当性が欧州委員会で審議され、遺伝子組み換え作物が危険だと主張する両国の権利が、賛成23-反対4で支持された。

グリーンピースのヨーロッパ各支部ではロビー活動などに力を入れ、その結果、遺伝子組み換え作物に寛容な立場だったスペインやチェコ共和国、立場を最後まで明らかにしなかったドイツが禁止令支持の立場にまわった。反対票は英国、オランダ、スウェーデン、フィンランドの4カ国。ドイツのシグマール・ガブリエル環境大臣は、「どうしてアメリカ企業のための利益を支持し、EU内の市民を敵にまわす必要があるのか? その理由がわからない」と、禁止令支持の発言を行った。

最近のニューヨークタイムズ紙の報道で、アメリカ16州のトウモロコシ昆虫学者(注1)26人は、バイテク企業が情報共有を拒んでいるため、遺伝子組み換え作物の効果とその環境評価が十分にできないと、バイテク企業を批判する書面をEPA(米国環境保護庁)に提出したことが明らかになっている。この手紙は、企業による妨害を避けるために匿名で出された。遺伝子組み換え作物を国家戦略として推進するアメリカ国内でさえ、遺伝子組み換え作物の安全評価には疑惑が広がっていることが、序々に明らかになっている。

注1:トウモロコシの益虫や害虫について研究する学者

お問い合わせ:
特定非営利活動法人グリーンピース・ジャパン
遺伝子組み換え問題担当:棚橋さちよ