【東京】今年6月4日以前に北欧から日本に輸送され、国内の保税倉庫に放置されている鯨肉に対し、2カ月以上を過ぎた現在も日本政府は輸入手続きの申請を受けていないことがグリーンピースの調査でわかった。放置されている鯨肉は、アイスランドから輸送されたナガスクジラの肉60トンないし80トンと、ノルウェーからのミンククジラの肉約5トンの合計最大85トン。このままでいくと、関税法(注1)により約85トンもの鯨肉が保税蔵置所で保管期限をむかえ、廃棄の対象となる可能性がある。

グリーンピースが6月4日(注2)、この鯨肉の輸入業者に問い合わせたところ、「(輸入について)アイスランドの友人の手伝いをしているだけ」と回答している。その後、適切な輸入手続きの申請が行われず、保税倉庫に放置されていることについて説明を求めたところ(8月26日)「答えられない」としている。この輸入業者は今回の鯨肉輸入ために新たな取締役3名が就任し、今年5月に運営を再開した企業である。8月25日の時点でも、輸入手続きを管轄する経済産業省貿易審査課に輸入申請に必要な書類を提出していない。財務省関税局監視課によると、通常海外からの貨物は輸入許可が下りるまで国内の保税蔵置所で保管されるが、腐敗もしくは変質のおそれがある貨物は、適切な手続きが取られないまま保税蔵置所で3カ月の保管期限を過ぎると、廃棄される可能性がある(関税法第84条)。

ナガスクジラとミンククジラはともに、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)」の附属書〜氓ノ記載されており、商業目的のための国際取引は全面的に禁止されている。アイスランド、ノルウェー、日本の3カ国は、これらの種に対する規制を留保しているため、国内法や国際条約の上では輸出入が可能だ(注3)。「規制を留保しているとはいえ、約85トンもの鯨肉を無駄に処分するようなことになれば、国内外からの批判は免れないだろう」と、グリーンピース・ジャパン海洋生態系問題担当の花岡和佳男は指摘する。今回の鯨肉の輸出入は、6月下旬にチリ・サンティアゴで開催された第60回国際捕鯨委員会でも米国が言及し、問題視された。

また、廃棄の可能性のあるこの鯨肉について、水産庁はグリーンピースの問い合わせに対し「輸入許可の申請がされないので何もできない」と回答。保管期限を目前に、どう対処するかの予定も明らかにしていない。「ワシントン条約の規制を留保にしてまでクジラの肉の売買を可能にしているのに、これではあまりに管理がずさん」と花岡は訴え、「海の環境を守るためにも、海洋生態系の頂点に位置するクジラはきわめて重要であり、その取り扱いには細心の注意をはらうべき。水産庁は無駄な鯨肉の国際貿易を厳重に管理し、南極海クジラ保護区で行う1000頭近いクジラの捕殺調査見直しや、非致死的手段を用いた鯨類調査への移行などを進めて、海洋生態系の保護に努めてほしい」と結んだ。


お問い合わせ:
特定非営利活動法人グリーンピース・ジャパン
海洋生態系問題担当 花岡和佳男
広報担当 村上京子