弁護団 海渡 雄一
同 日隅 一雄
同 只野 靖
6月20日に逮捕されたグリーンピースの職員2名は7月11日に起訴され、7月15日に保釈されました。 2人の被告人のうち、佐藤潤一氏から次のような声明が届きましたので、お届けします。 2人は現在家族の元に帰り、生活を再建しようとしています。まもなく裁判が始まりますが、弁護団としてはこの裁判を通じて調査捕鯨そのものの必要性と透明性に関して市民による議論を深めることができればと考えています。

2008年7月23日

私たち佐藤潤一と鈴木徹は、6月20日の逮捕から27日間の身柄拘束を経て、7月15日の夜に保釈されました。

まずは、調査捕鯨船船員による鯨肉横領疑惑に関する私たちの調査活動やその後の逮捕を通じて、鯨肉を持ち出した場所である運送会社をはじめ、多くの方にご迷惑とご心配をおかけしたことを心よりお詫び申し上げます。

勾留期間中は弁護人以外との接見を禁止されていたため、保釈後に個人宛のメッセージ、報道、そしてインターネット上の個人ブログなどを通じて様々な意見に接し、今回の件について改めて考えることができました。

「調査捕鯨についてもっとその真相が明らかになるように追求してほしい」という趣旨の応援メッセージを国内外から25万通以上もいただきました。皆様のメッセージは、私たちにとって大きな励みになりました。それと同時に「調査方法に同意できない」「やりすぎだ」という厳しい声や報道が多くあったことも事実です。これらすべての意見を真摯に受け止め、反省すべきところは反省し、そして改善し、今後の活動へと活かしていく所存です。

私たちが青森市内で横領鯨肉を証拠として確保しようとした時に、その手法が必ずしも世間に受け入れられない可能性があるという認識はありました。しかし、調査捕鯨における横領行為を納税者に広く知ってもらうため、様々な批判を受けることも覚悟したうえで横領鯨肉を確保し、これを東京地方検察庁に対して告発の証拠として提出したのです。

しかし、他方で東京地検への告発、そして私たちの逮捕をめぐる報道の結果、通常の生活の中で調査捕鯨の是非について考える機会すらなかった人たちが、私たちの調査手法だけにとどまらず、調査捕鯨そのものの必要性と透明性に関して意見を述べたり、冷静な議論を始めたりしたことは、調査捕鯨の見直しを訴える活動にとって確実な進展であったと思います。今回私たちが最善と考えて取った方法以外に、果たしてどのようなやり方が可能だったのか、自問を続けていますが、答えは見出せません。

7月18日に調査捕鯨の実施主体である、財団法人日本鯨類研究所と共同船舶株式会社が連名で発表し、水産庁へ提出した「鯨肉をめぐる問題についての報告書」の内容は非常に粗末なもので、税金を100億円以上も費やしてきた事業体が国に対して提出する報告書とはとても思えません。天下り体質が深く根強く残った調査捕鯨の実情が見え隠れするようです。

現在、私と鈴木の活動には多くの制約がありますが、今後も”調査捕鯨”の実態について明らかにする活動を続けていく所存です。

グリーンピース・ジャパン
海洋生態系問題担当部長
佐藤潤一

お問い合わせ:
特定非営利活動法人グリーンピース・ジャパン
広報マネージャー 城川桂子
広報担当 村上京子