青森地方検察庁は、7月11日、南極海の調査捕鯨で得られた鯨肉を一部の捕鯨船員が横領していたという証拠を確保したグリーンピース・ジャパン職員2人を、窃盗および建造物侵入の疑いで起訴した。横領の証拠である鯨肉の入手について問われたもので、2人は起訴後も勾留され、身柄は解放されていない。

グリーンピース・ジャパン職員の佐藤潤一と鈴木徹は、調査捕鯨鯨肉横領が告発(注1)された約1カ月後の6月20日、青森県警と警視庁公安部によって逮捕され、青森警察署に20日間勾留されている。2人は逮捕に先立つ5月26日に、彼らの調査活動の詳細を記述した上申書を東京地検に提出。青森県警にもそのコピーを送付していた。上申書には、彼らが調査した、南極海におけるいわゆる調査捕鯨で得られた鯨肉が、調査船団の一部の乗組員によって大規模に横領されてきた実態が詳細に記述されている。調査捕鯨は国民の税金によって行われている。また上申書では、警察の捜査にいつでも協力すると伝えており、逃亡や証拠隠滅の恐れもなかった。

「国営事業における大きな不正をあばいた佐藤潤一と鈴木徹が起訴されたことは、非常に残念だ」とグリーンピース・ジャパンの星川淳事務局長は語り、「二人の職員は自ら責任をとる覚悟のうえで、国内法にも国際条約にも抵触する可能性が高い不正をどうしても明らかにする必要があると信じて、鯨肉横領の証拠品確保に踏み出した。鯨肉横領の疑惑は政治的な配慮から不問に付すいっぽうで証拠品入手の方法だけを取り上げれば、調査方法に問題があったという判断になるのだろう。その点は真摯に受けとめたい。捜査当局にはグリーンピース側を調べるのと同じ厳しさで、政府の一部と捕鯨関係者によって隠蔽されている”調査捕鯨”の全容解明に力を尽くしていただきたい」と訴えた。

起訴を受けてグリーンピース・ジャパンの弁護団は、「二人は逮捕される前から、事実関係について詳細な上申書を提出しており、逃亡や証拠隠滅の恐れはない。刑事訴訟法の原則にもとづき、早期に保釈が認められるべきである」と述べている。

グリーンピース2人の逮捕に対して、世界からは、彼らの一日も早い釈放と鯨肉横領の実態解明を求める23万9000通以上の訴えが日本政府へ送られている。また、30カ国35都市の日本大使館・領事館などの在外公館の前で、今回の逮捕に抗議するアピールが行われている(注2)。

事件背景:
今年始め、調査捕鯨を委託されている共同船舶株式会社の複数の現役および元社員からの情報提供を受け、グリーンピースの海洋生態系保護キャンペーン担当職員は、捕鯨船日新丸から陸揚げされ、船員の自宅へ発送された横領鯨肉と目される荷物を追跡した。グリーンピース職員は、ある船員の自宅に送られた4個のダンボール箱のうち1個の内容物を確認し、不正の立証のために確保。5月15日、東京地検への証拠品提出直前に開かれた記者会見で、市場価格にして30数万円相当の鯨肉が記者らに公開された。
5月20日、東京地検は告発を正式受理し、翌日、鯨肉入りの箱も証拠物件として引き取った。その約1ヶ月後、グリーンピース職員の佐藤潤一と鈴木徹が逮捕された直後に、東京地検は鯨肉横領を不起訴としている。

注1:鯨肉横領についての告発レポート『奪われた鯨肉と信頼-調査捕鯨母船・日新丸での鯨肉横領行為の全貌』:
(PDFファイル2.3MB) ※印刷する場合は白黒をお勧めします。

注2:2人の釈放を求めた世界各国の日本国在外公館での抗議と23万8000人からの署名

お問い合わせ:
特定非営利活動法人グリーンピース・ジャパン
広報マネージャー 城川桂子
広報担当 村上京子