【東京】南極海で日本の調査捕鯨母船・日新丸から鯨肉を受け取ったパナマ船籍のタンカー船オリエンタル・ブルーバード号は、近日、日本の港に鯨肉を積み降ろすと見られている。パナマが批准済みの「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(以下、ワシントン条約)に掲載されているミンククジラの輸出入に関し、同船が許可を得ていないことがグリーンピースの調べにより判明した。同船の運行を担当する日本の大東通商株式会社(本社東京都千代田区)はグリーンピースの問い合わせに対し回答を拒否している。本日、グリーンピースは同船が日新丸より積み荷の鯨肉を受け取り、また日本の港で荷降ろしすることはワシントン条約に違反している可能性が高いとして、パナマ大使館、および貿易を管轄する経済産業省に対し同船の緊急調査を要請した。

パナマ及び日本の両国はワシントン条約を批准している。この条約は希少な野生動植物の商業的な国際取引を規制するもので、その附属書Iにミンククジラ(Balaenoptera bonaerensis)が「絶滅のおそれのある種で取引により影響を受けるもの」として掲載されている。日本はミンククジラに関する項目を留保しているが、パナマはすべてのクジラ種を含む同条約を批准しているため、ミンククジラを許可なしに輸出入することはできない。

ズーム
パッケージに「赤肉・小切」など書かれたもが「調査目的」の鯨肉?!(C)GREENPEACE / JIRI REZAC 2008
南極海で“調査”の名のもとに捕獲されたミンククジラは、日新丸船上で“調査”後すぐに解体され、販売用に箱詰めされる。今年1月22日、販売用に箱詰めされた鯨肉が日新丸からオリエンタル・ブルーバード号へ運び込まれるのを、グリーンピースのキャンペーン船エスペランサ号とオーストラリアの税関巡視船オセアニック・バイキング号が目撃している。

パナマ船籍であるオリエンタル・ブルーバード号は、ワシントン条約に則り、附属書Iに掲載されているミンククジラの輸出入に関してパナマ政府の事前許可が必要とされるが、今月19日パナマ政府にグリーンピースが問い合わせたところ、同船にはこれまで一度もその許可書が発行されていないことが明らかとなった。

「日本政府による水産資源無償援助金を使った票買いの疑い(注1)があるなかで、調査捕鯨存続のために新たな違法行為が行なわれている可能性が出てきた。パナマ政府と日本政府は協力して早急にこの件を調査すべき」とグリーンピース・ジャパン海洋生態系問題担当部長の佐藤潤一は語り、「日本政府は正当性と必要性に欠ける南極海の調査捕鯨を見直し、環境立国を謳うG8ホスト国としてさらに環境保全の責任を果たす強い姿勢をしめすべき」と結んだ。グリーンピースはまた、パナマ大使館と経済産業省にたいし、違法性に関する調査期間中は同船からの鯨肉の積み降ろしを許可しないよう要請している。同要請書を海上保安庁へ送付すると同時に、スイスのワシントン条約事務局へも調査を要請する予定。

*プレスリリースに一部誤りがありましたので訂正いたしました。(2008年3月24日)

(注1):
3月3日プレスリリース
要請書 :
パナマ大使館宛て〔PDFファイル 378KB〕
経済産業省宛て〔PDFファイル 371KB〕
海上保安庁宛て〔PDFファイル 383KB〕
*要請書に一部誤りがありましたので訂正いたしました。(2008年3月24日)

お問い合わせ:
海洋生態系問題担当部長 佐藤潤一
広報担当 村上京子