【南極海】 日本の捕鯨船団を追跡し、南極海を就航中の国際環境保護団体グリーンピースのキャンペーン船エスペランサ号(オランダ船籍、2076トン)は、昨日、南極を回遊するザトウクジラの声の収録に成功した。ザトウクジラは変化に富んだ声を発することで知られており、その多くは繁殖期のラブソングだとされ、科学者や愛好家が多くその“歌”を収録している。ザトウクジラは赤道付近で子を産んだあと回遊し、南極海で食餌を行う。したがって、南極海を回遊するザトウクジラの発する声の収録は世界的に極めて希少(注1)。

ズーム
「私達は50頭を越える食餌中のザトウクジラに囲まれていた」と、エスペランサ号に乗船するグリーンピースの科学調査担当リアンドラ・ゴンサルヴェイスは語り、「食餌中に発する声を収録する貴重な機会だった。クジラの南極海での生態はまだ不明な点が多くあり、今回収録された声は、昨年10月半ばから年末まで行った衛星追跡調査『クジラ海道』プロジェクト(注2)の結果と共に、今後のザトウクジラの研究に欠かせない貴重なデータとなる」と、結んだ。

これとは対照的に、日本捕鯨船団の“調査”捕鯨では、ここ数年毎年1,000頭近くのクジラを捕殺しているが、その調査は国際捕鯨委員会で中止勧告が出されているように科学的に必要とされていない。

「日本の調査捕鯨は、私たちが納める税金を費やし、わずか一握りの官僚や政治家の利益のため鯨肉販売を主目的に行われている」と、グリーンピース・ジャパンの海洋生態系問題担当部長の佐藤潤一は語る。

さらにグリーンピースは国際動物福祉基金(IFAW)と協力して、ザトウクジラのID写真を撮りその個体群や個体識別を行なう、非致死的な鯨類調査も行っている。この共同鯨類調査プログラムは、クジラをより深く知るにあたり、クジラを殺さないで、どれだけ多くの情報を得ることが出来るかを証明するものであり、鯨類調査には捕殺は必要ないことを証明している。グリーンピースは今後もこのような鯨類調査を継続していく。

日本の捕鯨船団はザトウクジラ50頭を捕獲対象にしていたが、国際的な反対の声に1~2年の間、その中止を発表した。しかし、最大935頭のミンククジラと、絶滅危惧種に指定されている50頭のナガスクジラを捕獲予定であり、世界からの批判の声は消えていない。

グリーンピースのエスペランサ号は南極海の生態系保全のために、日本捕鯨船団を追跡・監視し、今後も南極海に留まる予定。

注1:
<報道関係の方へ> 収録したザトウクジラの声と映像の使用を希望さる方は広報担当:村上までご連絡ください。

注2:
クジラ海道プロジェクト 日本語ウェブサイト
クジラ海道プロジェクト 英語ウェブサイト

参考資料:
南極海での海洋科学調査2008〔PDFファイル〕
クジラは殺さなければ科学的な調査はできないか?〔PDFファイル〕

お問い合わせ:
海洋生態系問題担当部長 佐藤潤一
広報担当 村上京子