環境大臣 鴨下一郎 様

国連気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)
―及び京都議定書第3回締約国会合(COP/MOP3)ご参加に際してのお願い

環境エネルギー政策研究所(ISEP)
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
グリーンピース・ジャパン
地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
WWFジャパン


日頃よりの地球環境問題に関する鴨下大臣のご努力に敬意を表します。

加速的に深刻化している危険な気候変動を回避するためには、世界全体の温室効果ガス排出を、次の10年間で削減に転じ、2050年までに1990年レベルから半減しなくてはなりません。この大きな目標を達成するためには、12月3日から14日にインドネシアのバリ島で開催される「国連気候変動枠組条約第13回締約国会議及び京都議定書第3回締約国会合(COP13・COP/MOP3)」において、2013年以降の次期枠組みに関する正式な交渉を開始し、2009年までに合意する必要があります。

次期枠組みにおける日本の役割は、引き続き重要です。上記目標に沿った場合、日本を始めとする先進国は、2050年までに約80%の削減が必要と考えられています。そのためには、2020年等の中期的目標について具体的に定めると共に、強力な施策をすぐにも導入する必要があります。

10月16日の予算委員会で福田総理は、長期の総量削減目標を設定することを明言され、鴨下大臣におかれましても、年内にも、高めの目標を打ち出したいとの意欲を示されました。また、鴨下大臣は、「C&T型国内排出量取引」や「炭素税/環境税」などの経済的手法を排出削減に効果的な政策と繰り返し述べられています。私たちは、このような積極的な姿勢を大いに歓迎するとともに、心強く思っております。同時に、未だ産業界を中心に地球温暖化対策を強化することへの抵抗が根強いことを大変憂慮しています。目標達成計画の見直しを行っている審議会合同会議では、自主行動計画について透明性・検証性のあるフォローアップがなされないまま、これを継続することを前提に国内排出量取引など経済的手法については検討課題にとどめ、家庭については政策の裏付けのない国民運動が強調されるなど、国内対策の進展がみられておりません。

先の予算委員会では、福田首相は、他国がどうであれ排出削減に取り組む意欲を示されるとともに、ブッシュ大統領の提案を、目標の設定や主要排出国の取り込みなど軌を一にするところもあると述べておられます。しかしながら、現在の米国政府の姿勢は、今から10-20年の間に世界の排出量を減少方向へもたらす必要があるという、IPCC第4次報告書のメッセージに沿ったものではありません。2008年大統領選に向けて、米国内の動向も急速に変化しています。現政権の対応を批判し、議会レベルでは、2050年に1990年レベルで80%の削減やその実現のためのさまざまな施策についても提案が始まっています。米国やカナダの一部州は、欧州の排出量取引制度と連動することを発表しました。これらは米国の変化の兆しの一部に過ぎません。中国政府や南アフリカなどの途上国も気候変動政策に積極的な姿勢を見せ始めています。現在の米政権に同調することなく、政策転換の可能性に先んじて、日本が単独でも先進的な気候変動政策を率いていくことを、日本の国際交渉スタンスの礎としてください。

国連のもとでの議論を主導していきたいとの福田首相の決意のもとに、来年のG8サミットを主宰するにあたり、厳しい交渉の入り口となるであろうCOP13において、国内削減の道筋を法制化し、国際交渉を進展させる断固たる日本の意思を、世界に向けて示していただきたく、以下の要望を提案いたします。

危険な気候変動を防止するための目標値として工業化以前(1850年頃)より「2℃未満」の気温上昇に抑えることを、日本政府の政策の基本として明確にしてください。
日本を含む先進国は、京都議定書の第一約束期間以降の次の枠組においても、法的拘束力のある、さらに大規模な総量削減目標を掲げる必要があることを、明確にしてください。li>
2050年に1990年レベルに比べて世界全体で半減にいたる確実な道筋として、日本は、他の先進国と共に2020年に1990年レベル比で30%の温室効果ガス削減を目指すこと、また、2050年の日本の総量削減目標について、早急に確認し発表してください。li>
また、現在行われている京都議定書目標達成計画の見直しに際しては、
○大規模排出事業所に対しては、自主的取り組みに委ねるのではなく、国内排出量取引を導入する
○長期的な低炭素社会の礎となり、フリーライダーを防ぎ、削減努力が不十分な企業・個人も含めもれなく排出削減を促進するため、炭素税/環境税を導入する
○排出の伸びている民生部門に対しては、政策不在の“1人1日1kg”をモットーとする「国民運動」ではなく、建築物の断熱・省エネ基準強化やインセンティブの伴う政策を導入する
○自然エネルギーの強力な推進策(ドイツ型買取制度)を導入する
○当面の対策として石炭火力発電から天然ガスへ転換し、原子力に頼る削減策を抜本的に見直す
などの着実かつ即効性のある政策を早急に実現し、中長期的国内排出削減の道筋の法制化に着手してください。
私たちは、京都議定書の第一約束期間の達成を、特に国内対策を中心として確立していくことこそが、日本の、そして世界の中長期的な地球温暖化対策の実施へとつながると考えています。

G8において日本のリーダーシップを充分に発揮するためにも、上記のとおり、国内対策を抜本的に強化し、実施に移していくことこそが求められています。

CONTACT:

WWFジャパン:鮎川ゆりか・山岸尚之

地球環境と大気汚染を考える全国市民会議 CASA: 早川光俊

グリーンピース・ジャパン:鈴木真奈美

気候ネットワーク:浅岡美恵・平田仁子

環境エネルギー政策研究所 ISEP:大林ミカ

「環境・持続社会」研究センター JACSES:足立治郎