エスペランサ号船上よりアピール(宮崎沖)(c)Greenpeace
国際環境保護団体グリーンピースは、日本捕鯨船団の南極海への出航を控えた16日、同船団を日本から南極海まで追跡・監視すると発表した。そのため、グリーンピースのエスペランサ号(2076トン、オランダ船籍)は、現在、九州と四国の間の海域沖に向かって周航し、本日13時には宮崎沖の領海外で停泊を始める。エスペランサ号は、日本捕鯨船団の行う“調査”捕鯨が非科学的であり、税金を無駄に使い、そして鯨肉を日本市場に提供する商業的な捕鯨であることを世界に発信するとしている。

本年度の捕鯨船団は、当初、下関港を11月15日に出港としていたが、急きょ延期。ワシントンで福田首相とブッシュ大統領の始めての首脳会談が終了した後の今週末に変更されたと見られる。エスペランサ号が、捕鯨母船日新丸を先頭とする捕鯨船団の追跡を開始するのは来週始めになる模様。

「日本政府の“調査”捕鯨計画が、アメリカのようなクジラ保護支持国と日本の間に外交的な緊張を作り出しているのはこれで明らかだ」と、今回の追跡航行のリーダー、グリーンピース・インターナショナル海洋生態系問題担当のカーリー・トーマスは語り、「日米両首脳が会談する短い時間を回避しただけで世界からの批判がなくなることはない。日米両首脳は、南極クジラ保護区での捕鯨計画全体の中止を話し合うべきだ」と、結んだ。

出港準備をする日新丸(下関港)/ 停泊する捕鯨船団(下関港)
18日に下関を出航する日本捕鯨船団は、今年度、絶滅危惧種に指定されたナガスクジラ50頭と、危急種のザトウクジラ50頭を含む1000頭以上のクジラを捕獲する予定。危急種のザトウクジラが捕獲対象となるのは今回初めて。日本での報道は極端に少ないが、今回の捕鯨船団の出航に対しては、捕鯨の見直しを求める人々や、ザトウクジラを含むホエールウォッチングで観光収入のある国々の人々、世界のホエールウォッチング愛好家たちからの批判がこれまでにも増して高まっている。

一方、グリーンピースは、今年10月から、南太平洋の科学者グループと協力して、南太平洋クック諸島とニューカレドニア諸島で、ザトウクジラにGPS発信機をつけ、衛星を通して南極海に向かうクジラを追跡する生態調査を開始した。GPS発信機をつけたクジラは、グリーンピースのウェブサイト「クジラ海道」(注1)で世界の誰でもが見ることができるようになっている。12月ごろには、このウェブサイト上の地図で、南極海を目指す日本捕鯨船団の位置や、それを追跡・監視するエスペランサ号の位置も確認できることにし、南極捕鯨の実態の透明性を高め、誰でもその情報を知ることができるようにする予定。

「野生動物の調査は、非致死的に行うことを大前提にしなければいけない。絶滅危惧種の肉が居酒屋で販売されるような行為が調査と呼ばれるのは疑問」と、グリーンピース・ジャパン海洋生態系問題担当部長の佐藤潤一は言う。「南極海での捕鯨を正当化する嘘に、世界の人々だけでなく、日本の人々も、もう騙されなくなっている。税金が無駄遣いされていることも、もっと広く知られるべき。」

グリーンピース・ジャパンは、また、本日、今年2月に水産庁役人が海外メディアからの取材の中で、グリーンピースを『テロリスト集団』と呼んだことに対し、農林水産省がこの行為を名誉毀損と認め、謝罪し、訂正することを求めて、日本弁護士連合会に人権侵害救済申立書を提出する。

注1:
「クジラ海道」はこちらをご覧ください


お問い合わせ: 特定非営利活動法人グリーンピース・ジャパン
海洋生態系問題担当部長 佐藤潤一
広報担当 城川桂子
村上京子