クジラ海道をたどってみよう
国際環境保護団体グリーンピース・ジャパンは本日、ザトウクジラの回遊を追跡するウェブサイト「クジラ海道」(注1)を立ち上げた。「クジラ海道」ではこの時期に南極海を目指し回遊するとされる南半球のザトウクジラの動きを、世界中のだれもが衛星を通し、ほぼリアルタイムで見ることが出来る。「クジラ海道」は、南太平洋鯨類研究協会(South Pacific Whale Research Consortium)が、グリーンピースの後援でGPS発信機をとりつけ、ザトウクジラの回遊ルート、生息域、生存数構成を明らかにするための科学調査の一部をリアルタイムで一般公開したもの。

現在、「クジラ海道」で観察できるザトウクジラは19頭。グリーンピースは同ウェブ上で観察できるザトウクジラの名前を募集しているが、日本からはすでに、音楽家の坂本龍一さんとLUNA SEAメンバーのSUGIZOさんが名付け親になっている。坂本龍一さんが名付け親の「NEO」は現在、南緯20度、東経169度付近を回遊中。SUGIZOさんは、昨日、グリーンピース・ジャパン主催の「オーシャン・プラネット」(横浜赤レンガ倉庫で開催された海洋環境映像展2007のエンディング・イベント)での演奏後に「LYRA」と命名。「クジラ海道」からその回遊を見守ることにしている。

「この調査では南極海に向かうザトウクジラの回遊ルート・スピード・時期等の生態が明らかになるばかりでなく、大きな海洋環境問題も見えてくる」と、グリーンピース・ジャパン海洋生態系問題担当部長の佐藤潤一は語る。さらに、「日本水産庁が長年行っている致死調査が本来、科学的に必要ではないことも、この非致死的調査により明らかになるだろう」と続けた。

ザトウクジラへのGPS発信機の装着は、9月に南太平洋ニューカレドニア島沖とクック諸島で行われた。現地には南太平洋鯨類研究協会の科学者のほかに、グリーンピース・ジャパンの野田沙京らグリーンピースのスタッフも参加した。

南半球のザトウクジラは南半球の夏に向かって餌場である南極海を目指し地球規模の回遊を行うとされてはいるが、その具体的なルートなど科学的知見はまだ得られていない。そのため、生存個体数や絶滅リスクの具体的数値化などの情報はかなり曖昧で、解釈の違いから国際間での共通の保護対策が確立されていないのが現状。

また、ザトウクジラは、世界のホエールウォッチングのシンボル的存在で、最も人気の高い種。その回遊の軌跡がウェブ上でリアルタイムで見られるとあって、この「クジラ海道」へのホエールウォッチングファンからの関心が高い。

一方、日本の水産庁は、国際的にクジラ保護区に指定されている南極海域で毎年、クジラ約1000頭近くを捕獲しており、本年よりザトウクジラ50頭を新たに“調査”名目で捕獲するとしている。クジラ保護区で捕鯨を行っているのは世界で唯一日本だけ。日本の捕鯨船団が南極海に向かうのは11月上旬で、年末には捕殺を開始する。

注1:
ウェブサイト「クジラ海道」をご覧ください。


お問い合わせ: 特定非営利活動法人グリーンピース・ジャパン
海洋生態系問題担当部長 佐藤潤一
広報担当        城川桂子