【アンカレジ、アラスカ】 第59回国際捕鯨委員会(IWC)は、現地時間5月31日に閉幕した。終了にあたり、国際環境保護団体グリーンピースは次のような声明文を発表した。

グリーンピース、IWC終了にあたっての声明IWC期間中に3288頭の鯨類が死亡、IWCでは対応できず絶滅が宣言された中国のヨウスコウカワイルカについての議論は15分程度、そしてメキシコに生息し、現在もっとも絶滅に近いとされるバキータ(ネズミイルカ科、世界最小の鯨類)への対策についても同様の時間が割かれたのみだった。

4日間の会期中、それ以外の時間は「商業」「調査」「原住民生存」などさまざまな名前の下で、どのように捕鯨を行うのか、行わないのかの議論に費やされた。しかし、漁網による混獲、船との衝突、汚染、気候変動などの影響で死亡したであろう約3288頭 ( 注1 ) の鯨類については、まったく時間が割かれなかった。

第59回IWC総会は、議長と日本政府などの提案によって冷静な発言を参加者に求めることが確認された。しかし結果として、初日の会議以外では冷静とは程遠い発言が続き、日本政府をはじめとする捕鯨賛成国が投票をボイコットしたことで、さらにその状況が悪化した。このため、国際捕鯨委員会が鯨類保護に向けて本当に必要な対策を、すべての参加国の協力のもとに行っていく雰囲気はまったく作り上げられなかった。

一方で、IWCが特別な会議を設けてその改善を探り続ける合意を取りつけたことは評価したい。しかし、本当の改善は次の2点を前提とする。捕鯨以外の理由により90秒に1頭のスピードで鯨類が死亡している現状を打開する議論が可能になること、また国際捕鯨取締条約の抜け穴を利用した捕鯨を中止させられる機関に生まれ変わること――さもなければ、あらゆる鯨類の保護は実現されない。このままでは、ヨウスコウカワイルカのような種の絶滅を止められないだろう。

また、日本政府はIWCからの脱退の可能性を示した。しかし、IWC自体の規範からかけ離れた「調査捕鯨」という名の商業捕鯨によって大きく損なわれた日本の評価を理解しながら、自らの主張が認められなければ脱退をちらつかせる外交姿勢は、海洋問題に深く関わる国際社会の重要なプレーヤーとしてはふさわしくない。

最後に、今回のIWC会議内で日本政府が、グリーンピースの活動に誤解を与えるような発言をしたことに遺憾の意を表明し、これらの発言が撤回・中止されない場合には、名誉毀損で訴えることも含めて検討していく。

注1: IWCの科学委員会によると年間30万頭の鯨類が混獲によって死亡している。これは1日に822頭にあたる。

お問い合わせ

<アンカレジ>
佐藤潤一  グリーンピース・ジャパン海洋生態系問題担当部長
<東京>
城川桂子 グリーンピース・ジャパン広報担当