「京都議定書が誕生した会場で、日本の閣僚が世界の合意をないがしろにするかのような新たな国際的枠組みの構築を提唱したことは大きな問題だ」と、グリーンピース・ジャパン事務局長の星川淳は尾身発言を批判した。
温室効果ガス排出の削減目標を定めた京都議定書は、1997年、国立京都国際会館にて開かれた気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)において採択された。同議定書は、排出削減について国際的に合意された、最初の、そして唯一の取り決め。尾身大臣はそれを“越える”、「米国、中国、インドを含むすべての国が参加する新たな、実効力のある枠組みが必要」(注1)と発言している。
さらに尾身大臣は、原子力を「気候変動問題を解決する鍵」になる代替エネルギーと述べ、原発の利用を呼びかけた。ADBではこれまで原子力を議題として取り上げたことはない。
グリーンピースは今回のADB総会に対し、以下を求めた。
“クリーンな”石炭利用技術(注2)を含む石炭事業への融資を中止すること。
クリーンエネルギーへの10億米ドル支援を10年に渡り10%に増額すること。
クリーンエネルギーへの支援には石炭などの化石燃料を含まないこと。
「気候変動による打撃が、アジア・太平洋諸国の住民に迫っているにもかかわらず、ADB総会の主催国政府が、原子力という『持続不可能』な温暖化対策を提唱したのは、大きなショック」と、グリーンピース・インターナショナルのアジア地域気候担当アティナ・バレステロスは語り、「ADBの責務は発展途上のアジア経済を持続可能な未来へと導くことにある。ADBは地球温暖化抑止のためのビジョンを早急に構築すべき。残された時間は少ない」と、結んだ。
注1: 発言は英語。
“It is important to go beyond the Kyoto Protocol to create a new, practical and effective framework in which all countries, including the United States, China and India, will participate”
注2:ADBはクリーン・コール・テクノロジー(CCT)を提唱。“クリーン” と名づけられているが、石炭ガス化などの技術を導入しても、その燃焼にともな う二酸化炭素の排出量は、天然ガスや自然エネルギーより、依然としてはるかに 大きい。
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特定非営利活動法人グリーンピース・ジャパン
エネルギー問題コンサルタント 鈴木真奈美
グリーンピース・インターナショナル
広報担当 マーティン・ベイカー