国際環境保護団体グリーンピース・ジャパン、気候ネットワーク、原子力資料情報室など、気候変動や原子力、環境、エネルギーなどの問題に取り組む日本のNGO・市民14団体( 注1 )は本日、イギリスの地球科学者ジェームズ・ラブロック博士に宛てて、「地球温暖化問題と原子力の関わりについての公開質問状」( 注2 )を送付した。

ラブロック博士は著書『ガイアの復讐』や新聞への寄稿のなかで、「気候変動を生き抜くため原子力を最大限に活用する」よう説き、日本政府 (注3) や原子力文化振興財団 (注4) がホームページや新聞意見広告 (注5) のなかでその意見を大きく取り上げることにより、国民に原子力への理解を求めるための宣伝に使われている。

公開質問状では以下の9項目についてラブロック博士の考えを質すとともに、各項目に対し、原子力は地球温暖化対策に役立たない、との日本のNGOの見解を表明している。質問項目は以下の通り。

原子力が「特効薬」としての役割を果たすには、世界全体でいつ頃までに何基の原発が運転している必要があると考えるか?
チェルノブイリ原発事故(1986年)や東海村の臨界事故(1999年)のような事故は、今後二度と起きないと思うか?
原発の運転にともなって増大する低・中・高レベル放射性廃棄物は、どのように処分すべきだと考えるか?
核拡散やテロの危険については、どのように考えるのか?
原子力への圧倒的優遇策が、他のエネルギー源の開発と導入を圧迫していることを知っているか。
核分裂エネルギーは核融合エネルギーが実用化されるまでの“つなぎ”とのことだが、核融合発電が、全国の電力網に電力を供給するのは、いつ頃と見込んでいるか。
自然(再生可能)エネルギーを非現実的とする根拠は何か。
より確実で、より安全な地球温暖化対策は存在するが、それでも原子力は不可欠なのか。
「原子力を国内外で拡大すれば、世界のエネルギー消費がさらに増大し、地球温暖化防止に逆行する」と、グリーンピース・ジャパン事務局長の星川淳は述べ、「ガイア仮説の提唱者が自然環境と人類社会の両方を悪化させるような提言をしていることは極めて遺憾。私たちの貴重な時間と限られた資金は、より確実で安全な自然エネルギーの導入促進と省エネ対策に当てるべきだ」と、強調している。

注1:公開質問状への賛同団体(第一次集約における)は以下の14団体:
核燃サイクル阻止一万人原告団、環境エネルギー政策研究所、気候ネットワーク、グローバルピースキャンペーン、グリーンアクション、グリーンピース・ジャパン、原子力資料情報室、原水爆禁止日本国民会議、太陽光・風力発電トラスト、日本消費者連盟、ピースフードアクションnet.いるふぁ、ピースボート、ふぇみん・婦人民主クラブ、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会

注2:日本語訳(原文は英文PDFファイル,132KB)

注3:
原子力政策の課題と対応(資源エネルギー庁)

注4:http://www.jaero.or.jp/

注5:原子力文化振興財団による全面意見広告、2006年10月29日付読売新聞他。

お問い合わせ:
特定非営利活動法人グリーンピース・ジャパン
エネルギー問題コンサルタント 鈴木真奈美
広報担当           村上京子