【南極】本日、日本時間午後1時30分ごろ、国際環境保護団体グリーンピースのキャンペーン船「エスペランサ号」(オランダ船籍、2076トン)に日本の捕鯨船団の“調査”団長から無線で連絡が入り、15日未明に火災を起こし10日間南極海で立ち往生していた捕鯨母船(クジラの肉を加工し冷凍する船)日新丸が約3時間後に日本に向け航行を開始する予定、との連絡を受けた。 さらに、同団長は、現場海域を離れるために船団に燃料の補給を現在行っていることも「エスペランサ号」に伝えた。

グリーンピースは、日新丸が南極条約で守るべき海域から退去できるようになったことを歓迎する。 これまで、船団に周辺の氷などの状況について情報提供し救援活動をおこなっていた「エスペランサ号」は、船団が南極条約で定められた海域を去るまでエスコートし、途中で必要な援助があれば協力する予定。


日新丸とオリエンタル・ブルーバード(写真は2007/02/18)
〜Greenpeace/Beltra
「エスペランサ号」に乗船し、無線で同船団と連絡を取り、救援活動を行っているグリーンピース・ジャパンの野田沙京は「この間、捕鯨船団とは捕鯨問題の意見を超えて、信頼できる関係を築くことができたと思う。 日新丸の乗組員の安全と南極に環境汚染を引き起こさないよう、これからも少しでも役に立ちたい」と語る。

しかし、日本政府のこの問題への対応には問題点が多く見られる。 火災発生当時には松岡農林水産大臣が、証拠がないにも関わらず火災の原因をシーシェパードという他の環境保護団体によるものとほのめかす発言をし、南極条約では一番近くを航行し救援できる船が積極的に救援を行うことが奨励されているにも関わらず、グリーンピースの救援活動の要請に対し水産庁が政治的な理由で断るなどしている。 また、いまだに水産庁も、さらにこの捕鯨を管轄している(財)日本鯨類研究所も火災箇所や火災原因などを明らかにせず、南極条約で国際的に守るべき公海であるにもかかわらず他の国への情報提供を十分に行っていない。

また、今回火災を起こし、乗組員一人に犠牲者を出した日新丸は、1998年にも船内の工場内で火災を起こしている。その際、火災直後に乗組員一人が自殺を図っている。また、南極という厳しい環境で作業する船であるにもかかわらず、日新丸は耐氷構造になっていない。さらに南極での捕鯨活動が環境にどのような影響を与えるかの環境影響評価もおこなっていない。そして今回、燃料と冷凍されたクジラの肉を運ぶオリエンタルブルーバード号は27年前に建造された古いタンカーであることも判明しているなど、南極の環境への軽視が多く見られる(注1)。

「今回の件で、大きな汚染が起きなかったことは不幸中の幸いと言える。 南極という厳しい環境での船団乗組員の努力を評価したい。 しかし、これでいかに南極での捕鯨がずさんな管理体制のもとで行われているかが誰の目にも明らかになった。 私たちの税金を投資してまで、人命を軽んじ、貴重な南極環境に無駄なリスクを与えるこの捕鯨を、本当に日本人が望んでいるものなのかどうか、 来年のシーズンが始まる前にもう一度議論する必要があるのではないか」と、グリーンピース・ジャパンの海洋生態系問題担当部長の佐藤潤一は語る。

注1:2007年2月24日に発信しましたプレスリリースの中で、「オリエンタルブルーバード号はシングルハル(船底が一層構造になっており、重油流出事故につながりやすい)構造である」と記述しましたが、その後、ダブルハル(二重底)であることが判明しました。このウェブ版ではこの点の修正を加えています。間違った情報を発信し、関係各位にご迷惑をおかけいたしましたことここにお詫び申し上げます。

「エスペランサ号」からの野田沙京のブログ、「沙京の日記(from 南極)」をご覧ください。

お問い合わせ:
特定非営利活動法人グリーンピース・ジャパン
電話 03-5338-9800 FAX 03-5338-9817
海洋生態系問題担当部長 佐藤潤一
広報担当        城川桂子