昨日閉幕した第58回国際捕鯨委員会(IWC)の開催国、セントクリストファー・ネービス(別称:セントキッツ・ネービス) ( 注1 ) に、日本政府より「水産無償資金援助」として昨年度6億1700万円が支払われていることが明らかになった。

これは民主党喜納昌吉参議院議員による「捕鯨に対する日本政府の方針に関する質問主意書」への日本政府からの答弁書で明らかにされたもの。IWCで日本の立場を支持する加盟国を増やす目的、つまり「票買い」のために費やされた金額を明示し、昨年度の「水産無償資金協力」について、その使途を提供先など明らかにして欲しいとの質問に対し、答弁書では「票買い」の事実を否定せず、6つのプロジェクトを示した。その中には、最も高額なものとして今回捕鯨推進に投票しているニカラグア共和国に11億9600万円、そしてIWCが行われたセントクリストファー・ネービスに対し、6億1700万円が供与されたとしている。セントクリストファー・ネービスへの供与は「零細漁業振興計画」という名目で、昨年のIWCが終了した直後の7月1日に署名されている。

今回のIWCで日本政府は、「IWCによる小型鯨類の保護の停止」、「無記名投票」、「日本のミンククジラとニタリクジラの沿岸捕鯨を商業捕鯨一時中止の対象から外す」、「南極海のクジラ保護区指定を解除する」などの案件を提案。いずれも過半数に至らずに否決された。しかし、拘束力のない「宣言」に対して投票が行われ、33対32棄権1で採択された。これは18日午後、セントクリストファー・ネービスが提案(賛同国30カ国)したもので、「セントキッツ・ネービス宣言」と呼ばれている。この宣言が過半数を得たことにより、水産庁は日本側の主張が通ったとしている。

「日本人がほとんど知らないこの国に、6億円もの税金がなぜ昨年のIWCの直後に投入されたのか。この宣言が生まれた背景には、日本政府の水産無償援助の影響があるのは誰の目にも明らかだ」と、グリーンピース・ジャパンの事務局長、星川淳は語る。

同宣言は、日本の主張が過半数に支持されたとして水産庁の行動を評価する報道が見られるが、IWC直前に発表された日本リサーチセンターによる世論調査では77% が公海での商業捕鯨を支持しない、もしくは明確な態度を示していないことが明らかになっている ( 注2 ) 。

「納税者が求めていないものに対し、納税者の知らないところで税金が使われ、そのことが報道されない。また、調査が明らかにしたように需要のないものが、選択の余地のない学校給食や病院、自衛隊に配給されるなど、食品の強要があっていいものだろうか」と、星川淳。

グリーンピースは、2006年末から2007年初頭にかけて南極海のクジラ保護区で日本政府が行う”調査捕鯨”と称した絶滅危惧種を含むクジラの捕殺に対し、非暴力による監視・抗議活動を行う予定である。

注1: セントクリストファー・ネービス、別称セントキッツ・ネービス。西インド諸島の小アンティル諸島にあるセントクリストファー島(セントキッツ島)とネービス島の2つの島からなる独立国。イギリス連邦加盟国。

注2: 「捕鯨問題に関する生活者意識調査」 (PDFファイル)

グリーンピース・ジャパン「2006年 国際捕鯨委員会(IWC)に向けて」をご覧ください。

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