3月30日の夕刻、「ムダですが再処理はじめます 不経済産業省」、「核拡散は気にしません 原子力委員会」、「放射能汚染はじめます 日本原燃」などの文字が東京霞ヶ関の経済産業省別館の壁に投影された。これは国際環境保護団体グリーンピースが3月27日、二階経済産業大臣、安倍官房長官など列席の「核燃料サイクル協議会」で日本政府による「再処理路線の積極的な推進」が再確認されたことに対し、青森県の六ヶ所核燃料再処理工場の稼動は「ムダ」で、「不経済」で、「危険」であることをアピールしたもの。六ヶ所再処理工場は、置いておくだけのプルトニウムを分離する「ムダ」、19兆円もの電気料金を投げ捨てる「不経済性」、稼動後に起こる核拡散リスクの増加や放射能による環境汚染などの「危険性」を持つことを警告している。

青森県六ヶ所再処理工場では、明日にも最終試験運転(アクティブ試験)が始められようとしている。試験期間中およそ430トンの使用済み核燃料から約1%、4トン強のプルトニウムが分離される予定。これはおよそ長崎型原爆500発分のプルトニウム量に相当する。

日本政府はこれまで、六ヶ所再処理工場で分離されるプルトニウムは核兵器に使えないという誤った説明を国内で繰り返してきた。国際原子力機関(IAEA)の定義では、ウランとプルトニウムが50%ずつ混ぜられた状態の「混合酸化物」も、最長3週間で核弾頭の材料に加工することができる危険な物質である。こうした事実により、米ブッシュ政権が提案する新たな再処理計画においてすら、六ヶ所で使われる「PUREX法 ( 注1 ) 」は核拡散の危険が高いと述べている。米国下院のエド・マーキー氏ら6名は、核拡散上の懸念から六ヶ所再処理工場のアクティブ試験中止を求める書簡を1月末に日本政府宛てに送付した。また、IAEAのエルバラダイ事務局長は昨年、新規再処理工場計画などの5年間モラトリアム(一時停止)を含む「エルバラダイ構想」を提案している。六ヶ所再処理工場の稼働により、さらに日本国内のプルトニウム貯蔵量が増えることへの海外からの懸念は強い。

[写真] 〜 Greenpeace/Jeremy Sutton-Hibbert

「幾度となく発せられた国際社会の警告を無視し、日本は今、危険な核物質が世界へと拡散する第一歩を率先して踏み出そうとしている」と、グリーンピース・ジャパンの核問題担当、野川温子は指摘する。

再処理工場は運転中に大気や海洋へ放射能を放出するため、周辺の環境中の放射能値は現在の自然界レベルより上昇する。グリーンピース・ジャパンは2002年11月に青森県内で環境サンプリング調査を実施し、農作物や海産物からこれまでより多い放射能が検出されることを青森県と日本原燃(再処理事業者)に警告した。青森県は、アクティブ試験の開始後、農作物を含め環境中の放射能値が倍増することを認めているが、放射能値の上昇にともなう人体への影響は否定している。

「1000万年以上も汚染をもたらすアクティブ試験を、青森県知事は認めた。日本や青森県だけでなく、周辺国まで危険性にさらす再処理工場の試験運転をはじめる責任は重い」と、野川温子は語る。

経済産業省前では同日18時半頃から、グリーンピース・ジャパンを含む市民団体らの呼びかけによるキャンドルデモに市民およそ120人が集まり、日本政府がゴーサインを出した核燃料サイクル政策は、新たな核拡散の時代に向かう危険な政策である、また放射能によって安全な暮らしが脅かされる、として抗議の声をあげた。グリーンピース・ジャパンはまた、同日、経済産業大臣、青森県知事、日本原燃などへ宛てて、アクティブ試験中止を求める 要請書 を提出した。

要請書(PDFファイル)
小泉首相・二階経産相宛て(30KB) (同様の要請書を青森県知事、日本原燃へも提出)

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注1
湿式再処理法。剪断した使用済み核燃料を硝酸溶液に溶かし、溶液のまま重量の違いを利用してウラン、プルトニウム、廃液に分離する。

リサイクルではない!-再処理の問題点-

サイバーアクション「青森県でのアクティブ試験を止めるために」

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核問題担当 野川温子
広報担当 城川桂子