生態的に重要な原生林地域をすべて明らかにした史上初めての精密な世界地図が出版された。国際環境保護団体グリーンピースが発表したこの地図には、人間活動の影響を受けていない500平方キロメートル以上の原生林が衛星写真で精密に示されている。

同地図は3月21日、ブラジル、クリチバ市で開かれている生物多様性条約(CBD)第8回締約国会議の開催に合わせてグリーンピースが発表した報告書「回復への道を示す地図(Roadmap to Recovery)~世界に残された原生林の地図」 ( 注1 ) に掲載されたもので、衛星写真など最新の地図作製テクノロジーとデータを使い、道路、集落、水路、パイプライン、送電線など人間の活動によって分断されていない500平方キロメートル以上の原生林地帯が世界地図上に描きだされている。こうした原生林は現在、地球の陸地部分の10%以下にしか残っていないことが明らかにされている。グリーンピースは、原生林が多様な生物の宝庫であり地球の将来にとっての生命線であるとし、CBD会議参加各国政府に生物多様性を守るためこの地図をもとに森林保護区のネットワークを設定するよう呼びかけている。


報告書「回復への道を示す地図~世界に残された原生林の地図」より
グリーンピース・ジャパン森林問題担当の尾崎由嘉は、「今回の地図が示した500平方キロメートル以上の原生林の中で、現在までに保護区に指定されているのはわずか8%。残された地域が消失する前に、各国政府は保護区確立のための行動を起こし、この森林地域での産業活動を停止するモラトリアムを早急に発令すべき」と、3月17日に環境省に要請した。「日本政府はこうした森林地域で違法に伐採されている木材が輸入されている事実 ( 注2 ) を把握し、違法伐採の輸入規制を行なうべきだ。4月から木材調達に関して施行されるグリーン購入法の内容では問題は解決しない」と尾崎由嘉は語る。

地図によると「人間活動の影響を受けていない500平方キロメートル以上の原生林」が集中しているのは、中南米、北米、アジア北部、アジア南部・太平洋地域、アフリカなどの地域。中南米には35%、北米28 %、アジア北部19%、アジア南部・太平洋地域には7%が集中している。アジア南部・太平洋地域は、森林の破壊が地球上でもっとも速いスピードで進行している。すでにインドネシアの森林72%、パプアニューギニアの森林60%が破壊されている。その主な原因は、大規模に行われる違法で破壊的な伐採であり、そのうえ残された原生林の45%にすでに伐採権が与えられている。

パプアニューギニア、ウェスタン州では、今年2月末より原生林を違法伐採からまもる活動を先住民族とともにグリーンピースは展開している。これは地域の先住民族の慣習的土地所有権を明確にして違法行為を行う企業等から森林を守り、同時に生態系に配慮した伐採方法(エコフォレストリー)の普及に努めながら、地域住民自らが森林管理を進める活動。現地に作られた活動拠点「グローバル・フォレスト・レスキュー・ステーション(森を世界中の人々と共に守る拠点)」には世界各地からボランティアが集まり、先住民族の活動を支援している。日本からは白井優さん、堀口貴行さん、山中恭子さんの3人のグリーンピース・ジャパン・ボランティアが参加する。

また、グリーンピース・ジャパンでは「森へリボンをプロジェクト~むすんで守ろう原生林」を開始し、パプアニューギニアで行われている先住民族の森林保護活動に使う緑のリボンを送って、活動支援の呼びかけを開始した ( 注3 ) 。日本は消費する木材量の80%を輸入材に依存しており、パプアニューギニアから輸出される木製品の20%近くが日本で消費されている。


注1
レポート「回復への道を示す地図(Roadmap to Recovery)~世界最後の森林地図」は英文にて発表。日本語版は4月中旬に発表される予定。地図は下記のURLでご覧いただけます。
WORLD INTACT FOREST LANDSCAPES
http://www.intactforests.org/

注2
プレスリリース「パプアニューギニアで違法伐採された原木を香川県詫間港で発見」(2005/12/8)

注3
「森へリボンをプロジェクト~むすんで守ろう原生林」をご覧ください。


グリーンピース・ジャパン パラダイスフォレストキャンペーン


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森林問題担当  尾崎由嘉
広報担当 城川桂子