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ケープタウンを出港するキャンペーン船エスペランサ号
〜 Greenpeace/Jeremy Sutton-Hibbert

【ケープタウン、南アフリカ】 地球温暖化、海洋汚染、過剰漁業など、環境破壊が急速に進行している世界の海の現状を明らかにしようと、国際環境保護団体グリーンピースは「100万人の大航海」と名づけた14カ月にわたる大航海を開始する。海に依存している魚類、鳥類、海棲生哺乳類などの多くが絶滅の危機に瀕している ( 注1 ) 世界の海の現状に対し、この航海でグリーンピースは海洋保護区の世界的なネットワーク ( 注2 ) 作りの呼びかけを開始する。

今回の航海は、グリーンピースのキャンペーン船エスペランサ号(オランダ船籍 2076トン)とアークティック・サンライズ号(オランダ船籍 949トン)の2隻で開始される。今週末に南アフリカ・ケープタウンを出航。最初の目的地は、クジラ保護区に指定されている南極海。保護区の指定にも関わらず未だに続行されている捕鯨に抗議する予定。

国際捕鯨委員会(IWC)は全世界での商業捕鯨の一時中止勧告を出しているが、日本の水産庁は今年、南極クジラ保護区で、従来のミンククジラの捕獲数の2倍にあたる850頭(±10%)にすると発表。絶滅危惧種に指定されているナガスクジラも10頭捕獲するとしている。さらに再来年からは、同じく絶滅危惧種に指定されているザトウクジラ50頭が対象になる他、ナガスクジラの捕獲数も50頭と大きく増やされる予定。現在、日本政府によるこの「調査」捕鯨が、南極クジラ保護区で行われている唯一の捕鯨。 ( 注3 )

「商業捕鯨の禁止が合意されているにもかかわらず、いまだに国際社会はそれを止めることが出来ていない。ノルウェー、イギリス、オーストラリア、日本などは巨大な捕鯨船団を組織し、捕りやすいクジラから、次々に種を絶滅の危機に追い込んで来た」と、グリーンピース・インターナショナル海洋生態系問題担当のシェーン・ラッテンブリーは語り、「絶滅に瀕している大型クジラの運命を他の海の生物に繰り返させてはならない」と続けた。

海は地球の70%を覆い、地球上の生物の80%が棲む。海は私たちに酸素を供給してくれる。しかしながら、海では汚染が進み、温暖化の影響で水温が上昇するなど様々な環境破壊が進んでいる。今回のグリーンピースの航海は海のおかれた現状と向きあい、それを陸の人々に知らせていくことを目的としている。

「海の破壊は私たちの想像以上に進んでいる。海洋保護区のネットワークを構築することこそがその衰退を止めることができ、子どもたちの世代に健康な海を受け継がせることができる」と、グリーンピース・ジャパン海洋生態系問題担当の高名瑞は語り、「日本人は昔から海と深く関わって生きてきた。海からの恩恵を現在も多く受けている私達こそ海洋保護と海の持続可能な利用を率先して世界に訴えていくべき」と、結んだ。

南極海の航海の後、エスペランサ号は世界の4~5つの海域を14カ月に渡って航海し、それぞれの海域のもつ過剰漁業、汚染、違法漁業などの問題や脅威を明らかにしていく予定。 航海中、海洋保護区の地球規模ネットワークの地図の作成や、その必要を訴えていく。

グリーンピースでは世界から100万人の「オーシャン・ディフェンダー」を集めて海を守るための行動を呼びかける予定。エスペランサ号はグリーンピースの最も新しいキャンペーン船で、今回の大航海に適した最新のテクノロジーを備えている。船が世界のサポーターと交流できるブロードバンドのインターネット、水中カメラ、遠隔操作可能なカメラ、ウェブカムなどもその中に含まれている。乗組員は船から、ブログ、ポッドキャスト、ブイログ(ビデオのブログ)などができる。

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エスペランサ号航海予定図 (詳細は未定)



(注1)Pew Institute for Ocean Science

(注2)グリーンピースは世界の海の40%を海洋保護区に指定することを呼びかける。世界海洋保護区ネットワークは年間120億ドル(約1兆3千万円)が掛かる見込み。アメリカとヨーロッパで一本の香水に年間同額が費やされている。

(注3)1986年の国際捕鯨委員会による商業捕鯨のモラトリアムは「調査」捕鯨を認めている。国際捕鯨委員会は1994年南極海をクジラ保護区に指定している。


グリーンピース・ジャパン海洋生態系問題サイト


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