[写真]調査器具を用意する米メーン大のゴードン・ハミルトン博士 調査器具を用意する米メーン大のゴードン・ハミルトン博士
〜 Greenpeace/Steve Morgan

【グリーンランド発】国際環境保護団体グリーンピースのキャンペーン船「アークティック・サンライズ号」に乗船中の科学者により、グリーンランドの氷河が過去9年間で予想を超えた速さで移動していることが確認された。この観測結果は、最近の地球温暖化のグリーンランド氷河に与えた影響に関する予測を裏付けるものとなった。

「アークティック・サンライズ号」は、現在、グリーンランド周辺海域を航海し、北極での地球温暖化の影響やその兆候を記録している。同船には、米国メーン大学の研究チームが乗船し、最近の地球温暖化の証拠としての氷河の変動の調査を行っている。
高精度のGPSを用いて今週行われた調査では、グリーンランド東側に位置するカンゲルドラグスアーク(Kangerdlugssuaq)氷河が、年間約14km移動していることが明らかとなった。1996年 ( 注1 ) に衛星を用いて行われた調査では、年間5kmの速度で移動していることが観測されていたが、今回の調査結果はこれを大きく上回るものとなった。

氷河は、グリーンランドの氷床から氷を海へと運び、海面上昇につながる氷山を生み出している。カンゲルドラグスアーク氷河は、グリーンランド氷床の4%の氷を流出させており、こうした氷河の移動速度の変化は海面上昇に大きく関与する。

[写真]グリーンランド・カンゲルドラグスアーク氷河を調査するグリーンピースのキャンペーン船「アークティック・サンライズ号」 グリーンランド・カンゲルドラグスアーク氷河を調査するグリーンピースのキャンペーン船「アークティック・サンライズ号」
〜 Greenpeace/Steve Morgan

「これは劇的な発見だ。こうした変化がその他の氷床でも発生し、氷の流出が加速することは、現在の氷床への気候変動の影響を計算するモデルでは勘案されていない。消失する分と同量の降雪がない限り、この新しい調査結果はグリーンランド氷床の消失がこれまでの予測を超えて大規模かつ速い速度で発生する可能性を示している」と観測を行っているメーン大学のゴードン・ハミルトン博士は語り、「温暖化傾向が北にも及ぶと、高緯度にあるグリーンランドの氷河も同じ反応をするだろう。こうなると、海面上昇の速度に深刻な影響をもたらすことになる」と付け加えた。

グリーンランド氷床の不可逆的な融解は、局地的な平均気温3℃程の気温上昇で発生する可能性がある。これが現実のものとなれば、今後数千年で海面は7mも上昇することになるが、0.5-1mの上昇でも社会に大きな影響が出る。70%以上の世界人口は、沿岸地帯に住んでおり、世界15大都市のうちの11は沿岸あるいは河口に位置している。

「グリーンランドの氷河の変化は、今すぐ気候変動防止のための行動が必要であるとの警告だ。こうした警告がブッシュ政権が行動を起こすのに一体いくつ必要なのか」と、今回の調査チームリーダーであるグリーンピースのマルティナ・クルーガーは述べている。


(注1)
7月21日発信のプレスリリースでは1988年と記載していましたが、1996年の誤りです。

関連URL

グリーンピース・ジャパン地球温暖化問題サイト

パタゴニア氷河と気候変動


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