【米国 ニューヨーク】5月1日より開かれていた核拡散防止条約(NPT)再検討会議が、本日、会議の議題が決まらない状態で決裂したまま閉会した。核兵器の全廃を目指しているこの国際会議の失敗は、核による脅威が世界に広がることを意味している。

「加盟各国が自国の権利と利益に執着するばかりに、真の核兵器廃絶を求める政治的意思が全く見られなかった」と、開幕より同会議に参加して、核軍縮・不拡散へ向けて具体的な討議がなされるよう加盟各国代表に働きけてきたグリーンピース・ジャパンの核問題担当野川温子は語った ( 注1 ) 。

今回の会議を失敗に導いた要因として、グリーンピース・インターナショナルの軍縮問題専門家ウィリアム・ピーデンは、イスラエルや北朝鮮など条約に加盟していない国々が核兵器を保有していること、米国が軍縮の前進を拒み核実験再開を示唆していること、イランなどで核兵器の開発が疑われていること、核兵器に使用可能なプルトニウムを生産する核廃棄物再処理工場を日本や他の国々が押しすすめていることなどをあげている。今回のNPT再検討会議は、これらの世界を核の脅威に晒している問題を未解決のまま放置した。

「条約の規定による核保有国、非核国という区分け自体が、実質的な問題の議論開始の障害となっている」と、野川温子は語っている。

前回2000年のNPT再検討会議以来、世界には、新たな核拡散の問題が生まれている。北朝鮮の脱退、秘密裏に核兵器に使う事のできる技術を開発し機材を輸入していた国や非国家組織の存在。日本は非核国であるにもかかわらず、商業規模でプルトニウムを生産する再処理工場の建設を強引に進めていることもそのひとつ。

同会議の開会演説で、期限付きで新規の再処理とウラン濃縮施設を凍結することを訴えた、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長の提案は、核保有国、非核国双方に核不拡散をすすめるもっとも有効なものであり、条約の規定により各国間交渉を行き詰らせている局面を打開するものと期待されていた。しかし、この提案が取り上げられるべき主要3委員会 ( 注2 ) での協議が行われないまま会議は閉会したのである。
「多くの国々が中東や北東アジアの核拡散、そして六ヶ所再処理工場の稼動を含む核問題を認識しながら、世界で最大の条約の再検討会議を決裂させてしまった」と、野川温子は語っている。

一方、NPT再検討会議へは、延べおよそ4000人のNGO関係者が参加した。ワシントンに本部を置く「憂慮する科学者連盟」は5日、国連本部内で会合を開き、ノーベル賞を受賞した米国の物理学者や、安全保障政策に直接係わった退役政策担当などを含む、計27名が六ヶ所再処理工場の無期限延期を求める署名を発表した。また、NPT再検討会議本会議のNGO提言の中で、米国の反核・環境保護団体「ブルーリッジ環境防衛連盟」の代表が、「非核国で初めて商業規模の再処理を始める予定の六ヶ所再処理工場の計画は放棄されるべきだ」という提案を行った。また、米国やカナダ、英国、ブラジル、ベトナムなど世界中から、およそ3700人の市民が六ヶ所再処理工場の稼動停止を求めるメッセージを、日本政府の国連代表部などへメールで送っている。

「再検討会議が成果を残せないまま閉会した今こそ、非核国である日本の政府は、プルトニウムを生産する六ヶ所再処理工場の稼動は核の拡散であることを認識し、工場を停止することで核廃絶への確実な方向を世界に示さなければならない」と、野川温子は語っている。


注1 下記のグリーンピースWeb サイトをご覧ください。
核拡散防止条約(NPT)再検討会議 –ニューヨークからの報告


注2 NPT再検討会議の3委員会: 第1委員会(核軍縮)、第2委員会(核不拡散)、第3委員会(原子力平和利用)

関連URL

「NO MORE ヒロシマ ナガサキ STOP 六ヶ所再処理工場」サイト

お問い合わせ:
グリーンピース・ジャパン
電話 03-5338-9800 FAX 03-5338-9817
核問題担当 野川温子
広報担当  城川桂子