【ロンドン/ワシントンD.C.7月7日】イラクから2週間程前に極秘に核物質を空路で持ち出した米ブッシュ政権に対して、グリーンピースはその詳細な情報を開示するように求めた。同時に、危険性が高い可能性があるこれらの放射性物質を、全面的に国際原子力機関(IAEA)の管理下に置くようにとも要求した。

「危険な核物質のうち”だいたい”1000個は安全に回収した」 ( *注1 )というエイブラハム米エネルギー省長官の説明は、核物質の流出あるいはテロリストによるいわゆる「汚い爆弾」が製造される危険性を考えてみた場合、まったく不充分だ。
「”汚い爆弾”が作られる危険性を前にして、”だいたい”というような言葉は不穏当だ。正確にいくつあるのか、イラクにはいくつあったのか、そしていくつ行方不明になっている可能性があるのかが判らなくてはいけない。アメリカ政府は”イラクが大量破壊兵器を保有している”というまやかしを盾にイラクを先制攻撃した。国際社会は、放射性物質管理に関するアメリカ政府の言葉を信用していない。」と、グリーンピース・インターナショナルのマイク・タウンズリーは語っている。

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核物質がブラック・マーケットに流出していないことを保障するには、過去と現在の核物質の記録が完全に開示されることしかない、とグリーンピースは考えている。最近、イラクの核物質がオランダとトルコで発見された。これは、核物質がイラクから流出しえることを如実に示している。テロリストが入手することも可能だということだ。

「アメリカ主導の暫定占領当局は14カ月間、IAEAが自由にイラクに出入国することを拒んできた。その理由は何か。アメリカは何かを隠そうとしていたのではないだろうか」とタウンズリーは語った。

新しいイラク人政府に対し、グリーンピースは、ブレマー元暫定占領当局長官およびアメリカ政府がなしえなかったこと、つまり、イラクのすべての原子力施設への立ち入りをIAEAに認め、イラクを国際的な核非拡散の枠に戻すことを求めている。

グリーンピースは、アメリカ政府による戦闘終結宣言後まもなく、バグダッド近郊のトゥワイサにあるイラク最大の原子力施設が「略奪」にあったという報告が飛び込んできたことから、調査チームをイラクへ派遣することを決定した。調査チームは2003年6月16日から7月4日までバグダッドに滞在した。調査チームの発見したトゥワイサの状況は極めて深刻だった。広範囲の放射能汚染に加えて、連合軍の危機管理能力の不備と非協力的態度がその地域に蔓延していた。 ( *注2 )

グリーンピース調査チームが2003年6月から7月4日にトゥワイサで発見したこと

“イエロー・ケーキ”( *注3 )と呼ばれる放射性物質の攪拌用容器が、まだ4~5キログラムのウランを中に残したまま村の空き地に投棄されていた。

近くの民家からは放射能が検出された。ある民家では汚染源から、通常の1万倍の放射能レベルが検出された。

空き地には放射能で汚染された工業用資材の小片が見つかった。

民家からも放射能で汚染された容器が見つかった。

放射能マークのついた物品が村のいたるところに散乱していた。

トゥワイサの原子力施設からの物品と接触した後に、原因不明の病気になったという数々の証言を得た。



2003年6月グリーンピース調査チームの記録映像より


グリーンピース調査チームの映像がありますので、ご希望の方は下記のグリーンピ-ス・ジャパン広報担当までご連絡ください。


注1
ボストングローブ紙:2004年7月6日


注2
2003年6月26日付けグリーンピース・プレスリリース
2003年6月30 日付けグリーンピース・プレスリリース


注3
イエローケーキとは鉱山から掘り出されたウラン鉱石を精錬した黄色の粉末状のもの。




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