オーストラリア、タスマニア州から製紙用木材チップの輸入を行っている三菱商事株式会社は、5月14日、グリーンピース・ジャパンとウィルダーネス・ソサエティー ( 注1 ) が3月に送った要望書に対し、「タスマニアから購入する全てのチップを二次林・植林木由来のチップに、可能な限り速やかに切り替えます」、と回答した ( 注2 ) 。

グリーンピースは、タスマニアの原生林保護のために、これまで木材チップおよび紙・紙製品等を扱う日本企業に対し、タスマニアの伐採企業ガンズ社 ( 注3 ) によって破壊的に原生林を伐採して産出された木材チップおよび製品の購入の確認と、購入停止を求める活動を行ってきており、三菱商事株式会社には、3月2日に要望書を提出していた。

今回の回答で同社は、「タスマニアにおける原生林および保護価値の高い森林の持続可能でない伐採は支持しません」とし、「タスマニアから購入する全てのチップを二次林・植林木由来のチップに、可能な限り速やかに切り替えます」と明言している。この点について、グリーンピースは同社の姿勢を評価する。

さらに同社は、森林製品関係の事業投資先に関して、「可能な限り、FSC認証 ( 注4 ) を優先していきます」としており、グリーンピースは、この意味するところは、環境、社会、経済にわたる関心に応え、独立機関による生産から最終消費まで追跡可能な管理網システムの導入によって、同社が、原生林破壊に加担しないためのステップをとる、ということと理解する。

今回の回答に対してグリーンピースは、同社がタスマニアでの原生林および保護価値の高い森林の破壊に対する懸念を示していると理解し、今回の回答に書かれた方針を早急に実行に移すことを同社に求める。

グリーンピースでは、昨年11月より、ガンズ社の主要顧客企業である、日本製紙、王子製紙、三菱製紙に対して、タスマニアの原生林破壊に起因する木材チップ購入を停止することを求めるE-メールを送る運動をよびかけており、すでにこれら企業には、世界中の市民から10,000件以上のE-メールが送られている。タスマニアでは、毎年20,000ヘクタールもの森林が破壊的に伐採され、そのうちの90%近くが、紙・紙製品となるためにチップとなって日本に輸入されてきている。タスマニアの原生林破壊を食い止めるには、主要な市場となっている日本が重大な役割りを担っており、グリーンピースは、今後もこれら製紙企業をはじめ、関連する日本の購入企業に対策をとるよう求めていく。


注1
ウィルダーネス・ソサエティーは、オーストラリア国内の自然保護のために地域レベルで活動する、オーストラリア最大の非営利の環境擁護団体。グリーンピースは、オーストラリア国内だけにとどまらないこのタスマニアの原生林破壊問題に関して、情報交換を行っていくと同時に、同団体の活動を支援している。

注2
2004年5月14 日付 三菱商事株式会社からの返答
日本語 英語


注3
ガンズ社はタスマニアの伐採企業であり、世界で最も破壊的に広葉樹の伐採を行っている企業のひとつ。同社は、毎年500万トンもの天然林からの木材チップを輸出していて、そのほとんどが日本向けである。同社は、タスマニアの原生林からの伐採と木材の購入を行なっており、オーストラリアの環境保護団体やタスマニア住民の7割が反対しているにも関わらず、いかなる声も無視して、原生林破壊を止めることを拒み続けている。


注4
FSCとは、Forest Stewardship Council(森林管理協議会)という、1993年に設立された非営利の国際的森林認証機関。本部はドイツ・ボンにあり、環境保全の観点に立って、適切な森林管理を支援している。国際的に合意された「FSCの原則と規準」に従って適切な管理がなされている森林を「認証」し、産出された木材・木製品には、FSCのロゴマークが付けられる。



関連URL
・グリーンピース・ジャパン タスマニアサイト

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森林問題担当  尾崎由嘉
広報担当     城川桂子