グリーンピース・インターナショナル、グリーンピース・ジャパンは、「不正溶接で明らかになった六ヶ所再処理工場の品質保証問題は解決しておらず、また、そもそも各国の技術で作られたジグソーパズル的工場を安全に運転できるのか」と警告を発する意見書を、2月25日、経済産業相の諮問機関、「六ヶ所再処理施設総点検に関する検討会」に郵送で提出した。意見書は、グリーンピースが委託した、再処理施設の安全性の検討について長い経験を持つ、英国の原子力コンサルティングである「ラージ・アンド・アソシエイツ」 ( 注1 ) とフランスの民間研究機関「ワイズ・パリ」 ( 注2 ) によってまとめられたもの。

(意見書全文: 日本語 PDFファイル:23KB 英語 PDFファイル:54KB

主なポイントは以下の通り。

日本原燃による補修計画は、元々の設計に責任を持つ英BNFL社、仏コジェマ社に報告がされていない疑いがあり、海外の経験が生かされていない恐れがある。

十分な情報公開がなされていない。
-フランスより厳しい日本の耐震規制にフランスの技術導入で十分なのか懸念されるが、十分な情報が公開されていない。
-フランス再処理工場で未経験の六ヶ所再処理工場のウラン・プルトニウム混合工程の技術は商業規模で実証されたものではない。また十分な情報が公開されていない。

海外再処理工場との比較のための資料に不備がある。
-たとえば、ラ・アーグで1981年に起きた廃棄物サイロの火災は、大事故とみなされたもので、セシウムなどの放射性核種の年間限度の10倍の放射能の放出をもたらした。施設から6kmも離れたところで相当量のストロンチウム90による汚染が発見された。しかし、検討会に提出された情報は、この火災は後にINES(国際原子力事象評価尺度)でレベル3に評価された大事故だったにも関わらず、この火災を過小評価している。
-たとえば、1996-2000年の期間に、ラ・アーグ再処理施設の運転において、平均して毎年15件以上の事象が報告されているが、適宜に情報提供がされていない。

日本原燃による想定されている事故は小規模すぎる。
-大規模な地震による破壊、燃料を満載した燃料給油機も含む軍用機の衝突、国家石油備蓄基地における事象等の影響、そして破壊行為・テロリズムが想定されていない。

事故時の対策に不備がある。
-事故時の原子力緊急事態応急対策拠点施設(オフサイト・センター)への通報に関して日本原燃に判断の余地があり、対策の遅れを生じる恐れがある。

六ヶ所再処理工場の事業者日本原燃は、同工場の不正溶接事件の後、求められていた品質保証総点検に関する報告書を経済産業省原子力安全・保安院へ2月13日に提出している。総点検については、同省の諮問機関「六ヶ所再処理施設総点検に関する検討会」で評価・検討を受けている。同検討会はこれまで8回開かれており、次回9回は2月29日、六ヶ所村で開催される。29日には報告書を受けての保安院の評価案が検討される予定で、了承されれば、検討会は総点検に関する検討のとりまとめへと進むことが予想され、不正発覚を受けて2002年11月から停止している使用済み核燃料の搬入再開や、ウラン試験のための安全協定締結へと状況が動き出す前提の一つとなる。

グリーンピース・インターナショナルの核問題担当ショーン・バーニーは「検討会は六ヶ所再処理工場の安全性評価において、決定的な役割を果たすこともできる。もし、本質的な安全性の問題を無視して、原子力産業にお墨付きを与えてしまえば、東海村臨界事故のような日本最大の原子力事故を起こす可能性を容認してしまうことになる。」と述べている。

グリーンピース・ジャパンの核問題担当鈴木かずえは、「プルトニウムは地球上もっとも危険な物質のひとつ。六ヶ所再処理工場はアジア地域の環境や人々の健康を脅かし、核拡散の脅威もある。日本原燃が再処理工場を運営する能力や資格のないことが明らかになってきた ( 注3 ) 今、再処理工場と日本原燃は最悪の組み合わせと言える。」と述べている。



注1
ラージ・アンド・アソシエイツ Large&Associates
1986年設立。民間の原子力コンサルティング。設立者のジョン・ラージは、原子力エンジニア。ラージ・アンド・アソシエイツは原子力に関する分析や法廷での証言を行っている。セラフィールド再処理工場に関しての英国政府に諮問を行っている他、欧州各国政府に原子力安全及び放射性廃棄物に関して諮問をおこなっており、原子力潜水艦「クルスク」の原子力リスク分析を行う専門家チームにも参加した。

注2
ワイズ・パリ WISE-Paris (World Information Service on Energy)
1983年設立。原子力及びエネルギーに関する独立の研究機関。欧州議会、仏政府、独政府などからの委託研究を手がけている。

注3
日本原燃は、「六ヶ所再処理施設総点検についての検討会」提出の資料「品質保証体制点検 不適切な施工等の根本原因分析結果を踏まえたマネジメントの反省と改善策について(2004.1.23)」において、マネジメントの反省として以下のように結論づけている。

一、化学的な安全性など原子力安全以外に対する品質保証の考慮が十分でなかった

二、施工段階の品質保証の重要性に対する認識が十分でなかった

三、使用済燃料受入れ・貯蔵施設施工時の人員配置の適正化を欠いた

四、協力会社と適切なコミュニケーションを行える体制の確立がなされなかった

一~四の事項についてトップマネジメントが不足していた



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